夢を持つ

さて、先日の話であった“want”を見つける作業ですが、日本では教育の在り方や進め方によって、”want”を見つけるというのがうまくできず、難しい現状があるということでした。ではそういった人の場合、どのようにコーチングすることで“want”を見つけることにつながるのでしょうか。

 

このときに問いかけるといいというのが「何をしたくないのか」「イヤなことは何か」「ほしくないものは何か」といった“not want”から入ることだと鈴木氏は言います。人は嫌なことには敏感だと言います。確かに人の批評やネガティブなところはすぐに予想がつきます。そして、見たくなくても見えてくるものです。そのため、思い切りわがままになって、何が嫌いなのかを話してもらうというのです。そうすることで、物事を対比するのです。対比することは事象を思い浮かべやすくする傾向があるそうです。“not want”をたくさん話した後、”want”を見つけ出していくようにしていくと目標が見えてきやすくなると鈴木氏は言います。

 

また、「視点を変えること」も大切なことです。コーチングの大前提は「すべての答えは、誰かとの探索の中で、一緒に見つけ出していける」というものです。そして、「夢」に気づかせることもできると言います。この「夢」ですが、果たしてどれくらいの人が「夢」を持っているでしょうか。鈴木氏は「夢」は外側に転がっているわけではなく、気づくことや見ることができるものであると言っています。しかし、その内側にはたくさんの膜や靄がかぶさっていて、夢をはっきりと鮮明に見ることができないと言います。そのため「自分には夢がない」と思ってしまうのです。そのため、コーチは膜や靄の向こう側に横たわる夢へのアクセスを可能にするのが役割です。そして、そのためのアプローチが「視点を変えること」なのです。さまざまな角度から対象を見ることで、全体像を鮮明に見ることができるかもしれないのです。

 

そのため、コーチは視点を移動させるための質問をクリエイトする必要があります。「制限が無かったら、どんなことをしてみたい?」といったことや、「10年後、今のあなたにどんな夢を追及してほしいと思っている?」といった質問です。こうすることで、それまで捉えることのできなかった夢を垣間見せるようにします。そして、夢が鮮明に見えてくると、その夢について話をさせます。こうすることで、明確な夢を持たせ、そこに多くの可能性を見出し、心の底からそれを手にしたいと思うまで話をします。相手の夢の中に心からの興味と関心を持って入っていくのです。

 

「夢」というとどこか「実現不可能なもの」と捉えている人は多いのではないでしょうか。自分自身もそう思うことがありました。しかし、「近づけるもの」と捉えることもできます。しかし、そのためには「明確な夢や目標」がないとそうはなりません。今の社会、自分で目標を見つけるということがあまりなく、「ミッションをこなす」という作業的に仕事をしている人も多いように思います。大切なことは作業をこなすのではなく、何のためにその作業があるのかを知ることや実感すること、意味を知ることは大切なことのように思います。そうでなければ、やりがいといってものは生まれてはきません。“want”を見つけること、夢を見つけることというのは主体的に向き合っていないとできないのです。こういった当事者意識を持たせることにコーチングの意味はあるのでしょうね。