安心感

前回の内容においても、大切なことは相手の現状分析であったり、目的と現状をすり合わせて、問題を解決していこうとすることです。その援助をコーチはしていかなければいけません。しかし、その時に難しいのが、では、「問題を解決していこう」と思わせる雰囲気を作ることの困難さです。自分自身このことは非常に課題にしています。そして、その土台となるものが「信頼関係」です。そもそも相手が信頼できる相手でなければ、相談事を持ちかけることもないでしょうし、その人の言葉が響くこともないでしょう。では、信頼関係はコーチングにおいてはどのように作っていくことが基になっていくのでしょうか。

 

鈴木氏はまず、「出会いの一言に新しさをこめる」ことが信頼関係の第一歩だと言います。いつもいう「おはよう」や「おかえり」といった言葉に何百回、何千回と同じ人との間で交わされる同じ言葉に、それでも“新しさ”をこめるのです。こういった何気ない日々の関係性を培うことからコーチングは始まると言います。つまり、コーチングが始まる具体的なセッションが始まってから、誰かと向き合ってから、関係構築を初めても遅すぎるのです。鈴木氏はこの出会いがしらの一言で人との関係性がつくれているか、それが自分がどれだけコーチとして成長しているかを示す、一つの指標となると言います。

 

次に、「安心感を持たす」ことです。コーチングの基本哲学は「安心感で人を動かす」ことであると鈴木氏は言います。アメやムチで相手を動機づけるのではなく、安心感をお互いの関係の中に作り出し、それを相手が行動を起こすための土壌とするのです。そして、この安心感を与える非常に強力な方法が、“同じ言葉を繰り返す”ことです。語尾だけを繰り返してもいいですし、あるいは「そうだよね」などの文で置き換えることも良いと言います。このように“同じことを繰り返す”ということは、相手の意見に賛成するということではなく、「相手が今そういう状態にあるということを認める」ということに繋がります。逆に同じ言葉が繰り返されないと、人は今ここでの自分のありかたに漠然として不安を持つようになります。まずは、相手の言葉を繰り返して、相手の状態を認めてあげてほしいと言います。そして、その後でも、「もう少し頑張ってくれよ」と声を掛けるのは遅くないと言います。

 

子どもたちにとっても、信頼関係というのは大きく関わってきます。よく「安心基地」という言葉が使われますが、子どもにとっても、信頼できる大人や何かあった時に助けてくれる存在があることで、新しい世界に飛びこむことやチャレンジをしていくことができます。こう考えていくと、大人も大きくは変わらないのだということが見えてきます。イノベーティブな活動が起きるためには、どういった環境が必要なのか、それは信頼関係を中心とした安心感がある環境が保証されてこそなのかもしれません。