不満から提案

人を指導し、コーチングするというのは口でいうのは簡単であっても、いざ実践となると難しいことです。私自身、人に伝えるときには非常に神経を使いますし、相手に「響いた言い方」ができているかどうかはとても気になります。それはひとえに「指導」しようとしていて、相手が築くように「援助」していないからかもしれません。前回の内容で、「ティーチング」と「コーチング」の違いを紹介しましたが、どうしても「ティーチング」的なリーダーシップを取ってしまうことが多々あります。

 

また、「ティーチング」になっています要因として、相手に対する信頼関係も大きく影響してきます。また、人に指導育成する立場にいると、やはり怖いのが「自分に向けられる“不満”です」特に相手を注意するにあたっては、このことは非常に気にかけます。相手にパワハラのように伝えてしまうとその場では返事をしていても、結果として、実践レベルになると結果が残らないようになってしまったり、自分で考えなくなったりします。場合によっては、責任転嫁が起きることもあるでしょう。ではどうすればよいのでしょうか。

 

コーチングにおいては「不満を提案に変える」ことが鉄則であるようです。そもそも、不満とは基本的に「あなたには私をハッピーにする義務がある(のに、それを果たしてくれない)」という被害者的なスタンスからのメッセージです。このことを「私(本人)が力を使わなければ、私はハッピーになれない」という形に変えるのです。つまり、その人本人に自己責任を明確にしたメッセージに変えるのです。そして、改善点を本人にも考えさせることが重要になってきます。こういったやり取りをすることで、不満を提案に変えることができるのです。そうすれば、不満におびえる必要が無くなります。

 

パワハラの問題はなかなか無くなりません。これは上が下に権威を脅かされたくないといった意識の現れであるから、下が不満を言ったり、何らかの形で表現したりすると、上から抑えようとするのです。鈴木氏は「選手を育てたいという気持ちはあるのだが、それ以上に『自分の力』に対するこだわりも大きいと感じる。」といって、結果的にパワハラになってしまうというのです。

 

これは確かにその通りかもしれません。「自分が相手よりもできる」と思ってしまうから、相手を説き伏せようとしてしまうのです。不満を提案に変えるというのは確かにリーダーシップを取る者にとっては必要なスキルであるように思います。そう考えると、これまでのワンマンなリーダーシップでは人がついてこないのはこういったことがなされていないからなのかもしれません。あくまで、働く人たちにも思いはあり、それと同時に責任も持ち合わせていなければいけないということを自覚させることも必要なのだと思います。提案しやすい環境というのはそれだけ責任もあります。これは子どもとのやり取りにおいても、同じことです。人が集団にいる以上、こういった一人という人格としての責任を自覚するということが結果として主体的な行動にもつながるのだろうと思います。