日本の若者意識

ポール・タフ氏はアメリカで勉強ができる若者たちは勉強を懸命にしたが難しい決断をする必要の無く、あるいは本物の難題に直面する必要の無かった。そういった子どもたちが実社会に出たときには、有能ではあっても自信がないというのです。こういった傾向は日本でも同様のことが言えるように思います。では、実際のところ日本はどうなのでしょうか。

 

内閣府の「子ども・若者白書」の中にある「特集1 日本の若者意識の現状」で紹介されていました。この調査のポイントの一つに日本の若者は、諸外国の若者と比べて、自信を肯定的に捉えているものの割合が低い傾向にあるが、日本の若者の自己肯定感の低さには自分が役に立たないと感じる自己有用感の低さが関わっていることが紹介されています。そして、そういった内容を諸外国の若者と比べることで今の日本がよくわかります。

 

この若者の意識の特徴及び問題などを把握し、子ども・若者の育成支援に関する施策の参考とするために平成30(2018)年度に「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」を実施しました。その内容を見ていくと日本の若者の現状が見えてきます。まず、「自分自身に満足している」という割合を見ていくとそう思うは10.4%、どちらかといえばそう思うが34.7%でした。足しても45%しかおらず、半数にも満たしていません。これを高いと見るか低いと見るかですが、これを諸外国と比べるとどう見えるでしょうか。お隣の韓国は「自分自身に満足している」の質問に対し、そう思うは36.3%、どちらかといえばそう思うは37.2%で、「そう思う」が日本の約3倍となっています。ポール・タフ氏のいるアメリカはどうなのでしょうか。アメリカは「そう思う」は57.9%とほぼ6倍とかなり違います。日本の「そう思う」と「どちらかと言えばそう思う」を足しても、アメリカには満たないのです。その他にも「自分には長所がある」という質問に対して「そう思う」というのが16.3%でほかの諸外国に対して1/2の数字になっていました。

 

一方で「自分は役に立たないと強く感じる」という質問では「そう思う」または「どちらかといえばそう思う」と回答したものの割合は51.8%であり、これはドイツ、フランス、スウェーデンに比べると高いのですが、アメリカイギリスよりは若干低く、韓国と同程度であった。この「自分は役に立たないと強く感じる」という質問ですが、これに「そう思う」または「どちらかといえばそう思う」と回答した者ほど、「自分自身に満足している」に「そう思う」または「どちらかといえばそう思う」と回答した者の割合が低かったが、諸外国の若者に同様の関係は見られなかった。この関係性からはどういったことが見えてくるのでしょうか。

 

ほかにも「自分の親から愛されている(大切にされている)と思う」という質問は「そう思う」と「どちらかというとそう思う」を足すと79%と非常に高い数値になっています。これが何を意味しているのでしょうか。初めに書いたようにタフ氏は「有能であっても、自信がない」ということに親の距離感の話がありました。高LGのラットのように子どもを愛することはあっても、失敗をして逆境を乗り越える経験をする子どもが多いのかもしれません。そして、それが自己有用感を高めることにもつながっていないようにも思います。それだけ今の時代、子どもが自分で決断し、考え実行するという機会が減ってきており、おのずと自身で失敗することもなければ、成功することも少なくなってきているのかもしれません。