3つの要素

ワンゴールでネルソンが彼のチームと生徒の大学入学に向けてのカリキュラムには大きな3つの大きな構成要素があると言っています。その3つの要素の中で、2つは大学の入学のための要素です。そして、残る一つが一番のプログラム成功の核心となる要素であると言っています。

 

まず、一つ目の要素ですが、それは3年生の年に行うACTへの集中準備講座で、寡黙内容に関する必須の知識と受験戦略を教え、生徒たちのスコアをあげていくための要素です。次に2つ目の要素は「大学へのロードマップ」です。それは生徒が2年生になったときから生徒や親と大学進学のプランを練ることから始まります。高校生活半ばから大学のキャンパスに足を踏み入れるまでの道筋、それもかなり明確に計画された道筋を見せられるとネルソンは言います。ワンゴールの生徒は出願するときだけではなく、大学入学まで全般にわたってサポートを受けるのです。そのため「アンダーマッチ」な学校でなく、自分に合った学校を選ぶことになり、自分に近い学校がいいのか、自宅から離れた学校が良いのか、出願時のエッセイの上手な書き方、受給できそうな奨学金を探すことなどです。しかし、ロードマップだけでは足りないネルソンは言います。なぜなら、入学までの方法は分かりやすく示すことはできたのですが、入学後にうまくついていくための訓練も必要だったというのです。有能な学生になる方法を教える必要があったとネルソンは言いました。

 

そして、3つ目の要素です。このことに対してネルソンはシカゴ学校研究コンソーシアムによる高校調査の特にメリッサ・ロデリックというアナリストの仕事に影響を受けます。ロデリックは大学での成功に決定的な意味を持つ要素は「非認知的スキル」であり、そこには「学習能力、学習習慣、時間管理、助力を求める行動、社交及び学業における問題解決能力」が含まれているとしました。そして、昨今のアメリカでますます広がる高校と大学のあいだの溝を埋めるのがこうしたスキルだと言います。

 

アメリカの現在の高校のシステムができたころの第一の目的は「大学に行かせるためではなく、仕事に就かせるために生徒を訓練することでした」。そこでは「批判的思考や問題解決能力はあまり高く評価されていませんでした」そのため、従来のアメリカの高校は生徒がものを深く考える方法を学んだり、内なるモチベーションを高めたり、困難に直面したときに粘ることを教えたりするようにはできていなかったのです。しかし、それこそが大学に残るために必要なスキルなのです。

 

始め、この高校のシステムはあまり勉強をしたがらない生徒が多い時代にはうまく機能していました。高校に我慢していれば、決められた時間席について、行儀よくしていれば、卒業証書は手に入っていたのです。そんな中、時代が変わっていき学歴間賃金格差が増大してきます。そのため、大学を卒業したいといった高校の生徒が増えてきました。しかし、現状のシステムの中でいた生徒たちの多くは大学に残るために必要な学業以外のスキルを持ち合わせていなかったのです。つまり、ネルソンはこういった生徒のスキルの部分を変えようとしていたのです。

 

ネルソンは学業以外の特定のスキル(大学での成功に直結する)を伸ばすことによって、私立高校の平均的な4年生と大学1年生の間の学力ギャップは比較的短期間で埋めることができるはずでした。そして、直観から5つの項目を割だし、臨機応変な対処、レジリエンス、熱意、専門意識、高潔さ、それらを「リーダーシップの基本」と呼び、ワンゴールの教師に徹底してもらいたいと呼びかけました。

 

ネルソンは「ACTのスコアの改善の手伝いならできるが、完全にギャップを埋めることはできない。だけど、その格差を埋め合わせる方法はある。そのカギとなるのがリーダーシップにも関わるこの5つの能力だ」と言っています。