最善の決断

スティーブ・ジョブズはマッキントッシュやiPod、iPhoneなど数多くの製品を生みだし、アップルを世界のトップ企業へと導きました。アップルはジョブズ亡き後も進化を続け、成長し続けています。彼の存在は今でも様々なビジネスリーダーに支持され続け、人間としての思想や価値観、生き様がリスペクトされているのは、ジョブズが生み出した製品が、私たちのライフスタイルやワークスタイルに大きな変化をもたらしただけではなく、新たな可能性や豊かさを与え、時には問題を想起しているからだろう。そのなかでも、スティーブ・ジョブズが2005年にスタンフォード大学の卒業式でのスピーチが有名だそうです。そして、これはタフ氏も言うところです。そのとき彼はがんを宣告され、死を間近に感じていたジョブズが語った「たった3つの話」でした。

 

そこには「未来を見て、点を結ぶことはできない。過去を振り返って点を結ぶだけだ。だから、いつかどうにかして点は結ばれると信じなければいけない」といったことや「アップル社に解雇されたことは、私の人生で起こった最良の出来事だったと後に分かった。成功者であることの重みが、再び創始者になることの身軽さに置き換わったのだ。私は解放され、人生の中でもっとも創造的な時期を迎えた」、「貪欲であれ、愚かであれ」といったように、あまりに有名なスピーチで語られたのは「点と点をつなげること」「愛と敗北」そして「死」についての言葉だったのです。一見、バラバラに思える経験でも、後に思わぬ形でつながり、自身の将来の大きな糧になること、大きな喪失や敗北が、自分至上最も創造的な時間と愛する人との出会いをもたらしたこと、そして、「死は生命の最高の発明」と認識し、死を意識しながら生きることの重要性を語ったのです。これらの言葉を通して、未来ある若者たちにジョブズが伝えたかったことは「失うことを恐れず、限りある時間の中で、自分が信じた道を進め」ということだったのかもしれないと「Forbes japan」のHPに紹介されています。

 

「成功する子、失敗する子」の著者ポール・タフはこのスティーブ・ジョブズのスピーチに関して、失敗と性格に関するジョブズの考え方とタフ氏がニューヨーク・タイムズ・マガジンにKIPPとリバーデールの記事を載せた中でとらえた議論には似たことが多くあるという電子メールを送られてきたそうです。タフ氏はジョブズのスピーチの映像を見て、ジョブズも一年生の時に大学を辞めていることを知りました。オレゴン州のリード大学でした。このことは何十年も前に大学を中退して、いまだにその決断を正当化しようともがいている場合、現在においてもっとも成功した、最も想像力のあるビジネスマンが同じことをしていたとわかるのはこの上なく心強いとタフ氏は言います。そのうえ、彼は後悔していないのです。ジョブズはスピーチの中で、退学は「人生で最善の決断の一つだった」と説明しています。それはジョブズにも、アップルにも、特別なかたちで利益をもたらしたといいます。必修科目から解放されて、ジョブズは割り当てられた授業よりも興味を惹かれた授業に出るようになったのだが、そのなかの一つにカリグラフィーとタイポグラフィーに関する講義があったのです。この授業を受けてジョブズは「どれも私の人生で実際に使う予定のない知識でした」と言っています。そして、その10年後、彼はスティーブ・ウォズニアックとマッキントッシュを作ります。そのパーソナルコンピューターには初めて独創的なタイポグラフィーを搭載することを決めたのです。そして、そのフォントが、それまでのコンピューターからマックが抜きんでる一因となるのです。