失敗から学ぶもの

タフ氏はスティーブ・ジョブズのスピーチで一番印象に残ったのは、彼の最大の挫折の話だったと言います。それは30歳の誕生日の直前にアップルから、つまり自分で作った会社から解雇されました。そのことをジョブズは「大人になってからの人生の中心だったものを失ったのです。それはもう大変なショックでした」と言っています。「わたしは公然たる敗者でした。」後になって、この劇的な大失敗の経験によって自分と自分の仕事に新し方向が与えられたことが分かったというのです。ジョブズの言うようにそれは後の最大の成功につながります。転機にあったピクサーを買収し、結婚し、心機一転してアップルに復帰したのです。そして、前回にも紹介した彼の言葉にある。「アップル社に解雇されたことは、私の人生で起こった最良の出来事だったと後に分かった。成功者であることの重みが、再び創始者になることの身軽さに置き換わったのだ。私は解放され、人生の中でもっとも創造的な時期を迎えた」という「Forbes japan」のHPに紹介された3つの言葉のうちの一つに当時、コロンビア大学の寮にいたタフ氏も感銘を受けるのです。

 

タフ氏はその後、彼も大学を中退します。そして、他の大学に入学し、そこも退学したのちに雑誌編集者としてジャーナリストとしてのキャリアを積み重ねていくのです。彼は大学の寮にいる間に悩んでいたのと同じいくつかの疑問と格闘し続けていました。それは「「上手にできることをするべきか、好きなことをするべきか」「思い切ってかけてみるべきか、安全策を取るべきか」そう思っているさなか、彼は気が付くとまたもやたいした安全策もないまま高名な企業、ニューヨーク・タイムズ社をやめようとしていたと言っています。

 

まるで、今の日本において、職を転々と変えている就職者に似ていますね。昔は「3年して仕事がわかる」といったように「最低でも3年」といった風潮がありましたが、派遣社員なども含め、今の時代、長く務めるということが必須ではなくなっており、転職も当たり前の時代になってきました。それがいいかどうかはわたしにはわかりません。自分に合った職場を探すということは大切なことのように思います。しかし、タフ氏のように、どこかで虚無感を感じたまま、職をかえていくというのはどこか残念なようにも感じます。

 

タフ氏は成功と失敗について考えるときに、自分の先行きよりも息子のエリントンの将来を思うことが多くなったと言います。そこには「自分については多かれ少なかれなるようになったと思う。だがエリントン(息子)は?」という思いでした。

 

ポール・タフ氏は自分の生まれたばかりの息子のこととこれまで神経科学者が子どもの発達に決定的な意味を持つ期間の発表を踏まえたうえで、クロスオーバーさせながら考えていきます。