子どもの遊びと反実仮想

18ヶ月かそこらの赤ちゃんでも反実仮想は起きているとゴプニックは言います。それは赤ちゃんが模倣やお芝居をする様子からわかるのではないかというのです。模倣やお芝居ができるようになるためには半事実が思い描けないとできないからです。見立て遊びをするというのは1歳児クラスの子どもたちの様子としてはよくあります。また、模倣に関していうと特に1歳児クラスの子どもたちは顕著に模倣活動をしていることが見て取れます。そして、その模倣して学ぶことがよりできるようになるような環境作りも同時に行うからです。よく見つけるのが、赤ちゃんが何か物をもってカチカチ音を鳴らしているのを見ていた他の子どもがそれを真似してカチカチ物をもって音を鳴らしたりします。この見たものを自分で素材を集めて、音を鳴らすというのを1歳児の子どもが行っているのを見ると、目の前で見た光景を自分のまわりにあるもので現実化するというプロセスを踏んでいます。確かにそれは反実仮想によって起きた予測や見通しの行動なのでしょう。

 

こういった行動が起こる中で「オモチャ選び」が重要になります。オモチャ選びは幼児や乳児のこういった行動の志向が反映されるというのです。ごっこや見立て遊びができるようになるのはそういったオモチャがあるわけではなく、子どもがごっこ遊びをするようになるから、その遊びに合ったオモチャを用意するのです。そのため、仮にオモチャがなかったとしても、子どもはその他の石や葉っぱ、親、そして、自分自身までをも何か別のものに見立てて遊ぶでしょうとゴプニックは言います。かりに遊びを禁じる文化の下でも、子どもは自然とこうした遊びを始めるのです。

 

そして、次第にことばの獲得と共に、子どもの想像力は一気に膨らみます。まだ、言葉を話せない時期でも未来の予測や創造がいくらかはできますが、言葉の助けを借りれば、概念を自由に組み合わせることや、そこにないものを表現することもできるようになります。

 

たとえば、ゴプニックは赤ちゃんの最初に言う言葉のうち「ノー」と「アッオー」といった言葉を挙げています。「ノー」は「イヤ」といった拒否の言葉と使われますが、「ダメ」といった禁止する意味や、失敗したときの掛け声、「違う」ということを訴えるときなどに使っています。他に「アッオー」は期待したことが実現しなかったり、できると思ったことができなかったときなど、理想が現実に裏切られたときに発せられることがあるようです。

 

この様子は海外の事例なので、日本とは少しニュアンスが違う部分がありそうですね。ただ「アッ」とか「アッア」といったように声を上げることは日本でもよくあり、言葉のように相手に訴えるときに発せられることがよくあります。

 

このようにちょっとした言葉のようなやり取りが行われる赤ちゃんはもう現実世界だけではなく、反事実と可能性の世界にも足を踏み入れているといえるのではないかとゴプニックは言います。ゴプニックはこれらの表現する言葉を覚える時期は、道具の使い方を思いつけるようになる時期と一致すると言います。なぜなら、言葉を得た幼児は幅広い可能性を思い描けるようになるからだというのです。