運動と脳

2021年3月6日の東洋経済オンラインに「子どもの学力を上げたい親が知るべき『運動の重要性』」という内容の記事がありました。これはIWA ACADEMY チーフディレクターであり、子どもの発達科学研究所の特任研究員である木村匡宏さんが記事を書かれていました。ここには「運動すると頭がよくなる」と話しているのです。

 

「頭がよくなる」ということと「運動」とは一見、つながっていないようにも思いますが、木村さんは「勉強」と「運動」を見たときに「脳を使う」という共通点から言うと非常に関係性があるのではないかというのです。このことについて木村さんは「人間が脳を使うのは勉強のばあいに限ったことではありません。走ったり、歩いたり、ジャンプしたりと、身体を動かすときも、人間はすべて脳からの指令を受けています。計算問題を解いたり、漢字や英単語を覚えたりすることだけが脳の働きではなく、考える、怒る、泣く、楽しむ・・・これらの感情の動きもすべて、脳の働きによるものです」というのです。

 

確かに、考えてみると体を動かすことに関しても、脳の指令から身体は動きますし、脳を働かすという点に関しては、勉強と運動は共通するところがあります。そこで「身体があって、脳がある」という前提を覚えておく必要があると言います。そして、人間の脳はバランスよく全体的に発達するのではなく、場所によって司る役割が決まっており、順を追って発達していきます。特に幼児期は運動をコントロールする「運動野」が発達します。そのため、この時期の子どもたちはとにかく走り回ったりして動きたがると言います。確かにこの時期の子どもたちは落ち着きがなかったり、障害物が無かったりすると走りたがるのはこういった発達段階だからなのでしょう。

 

しかし、昨今の子どもたちは運動不足が指摘されています。それはデジタルコンテンツの普及やゲーム、あと遊び場が少なくなっていることなども挙げられ、文部科学省・スポーツ庁「体力・運動能力調査」によると昭和29年度生まれと平成元年生まれを比較すると,昭和29年生まれの方が,いずれのテスト項目においても到達する最高(ピーク)値が高いことが見えてきます。平成元年から今では徐々にその運動率は良くはなっていますが、昭和29年に比べると未だに運動面は弱いことが見えてきます。

 

また、このデータからは「幼児期に外遊びをよくしていた児童は,日常的に運動し,体力も高い」ことや「幼児期に外で体を動かして遊ぶ習慣を身につけることが,小学校入学後の運動習慣の基礎を培い,体力の向上につながる要因の一つになっていると考えられる。」ということも読み取れるようです。木村さんも「本来、身体を使って遊ぶことが大切な時期に、身体を動からないことが習慣化すると、深刻な運動不足になっていく危険があり、実際に子どものロコモティブシンドローム(運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態)も多くみられるようです。そして、これは単純に身体、運動の発達の問題だけではなく、脳の発達の問題でもあるようです。