熱中できる遊び

IWA ACADEMYチーフディレクターで、子ども発達科学研究所の木村匡宏さんは子どもが脳全体のネットワークを高次元でつながることを促すことに、おいかけっこやドッチボール、サッカーといった楽しく、気持ちよく身体を動かすことで促されると言っています。そして、そういった体を動かし、脳全体のネットワークを高次元で繋げることで、複雑なことを考える力へとつながっていくと言っています。子どもが夢中で遊んでいるとき、脳ではシナプス同士がぱちぱちと光を放ちながら、興奮状態に入っているのです。時間を忘れるくらい夢中になって遊ぶということは、物事に取り組むときの深い集中力をはぐくむのです。

 

木村さんによると結果的に子どもたちが興奮して「遊び込んでいる」ことが重要であるというのでしょう。であるとすれば、これは身体を使って遊ぶということだけではなく、何かに「夢中になって遊ぶ経験」が脳にとっていいのではないかと読み取れます。

 

また、木村さんは「興奮させてばかりいると、コントロールの効かない、落ち着きのない子になるのでは?と心配される方もいるかもしれません。これは全くの逆です。」と言っています。正当な興奮を味わった脳のほうが、むしろコントロールが効くようになるというのです。それは「興奮を経験する」ということは、逆に「興奮を抑える経験」を増やすことにも繋がるからだと木村さんは言います。ただ、ここで注意が必要です。興奮を経験することが重要であるとはいえ、「興奮の質」にも気を付けなければいけないというのです。

 

では、「興奮の質」とはどういったことをいうのでしょうか。それはスマートフォンやゲームから得る興奮ではなく、木村さんが言うには「スポーツのようにさまざまな感覚、身体のあらゆる場所への刺激を伴う興奮こそが本物の興奮で、子どもの脳の発達を促す」というのです。そこで「身体を動かす」ということにつながるのです。しかし、考えてみると「様々な感覚、身体のあらゆる場所への刺激」というのは何も「身体を動かす」ことだけではありません。散歩や遊びの中でも、五感をつかうことはたくさんあります。大切なのは「実体験」として経験することなのでしょう。

 

木村さんも「『運動=スポーツ』ではない」と言っています。ルールのあるスポーツだけが運動ではなく、例えば、大人の場合だと通勤で階段や坂道を歩く、買い物をする(荷物を持つ)、洗濯物を干すというように、日常生活の中にも運動はたくさんあります。このように子どもたちの生活でも、様々なところに運動はあり、その多くは「遊ぶ」ことにあるのでしょう。たしかに、一つの場所にとどまって行うスマートフォンやゲームでは身体を動かすことはありません。

 

ドイツに行ったときに、「運動」について話を聞くことがありました。そこでも「運動=スポーツ」ではなく「運動=遊び」ということが言われており、特に環境に「体幹」を使うような不安定な場所や揺れる遊具などを用意していました。遊びの中で「体幹」を鍛えることで様々なスポーツの基礎につながると考えられていたのです。そして、「スポーツ」をすることは課外教室などで行うそうで、日本のように「スポーツ=運動」と考えるよりも、「スポーツ=スポーツ選手」というような捉え方をしており、「野球選手にしたいなら野球をする」というような感覚であったようです。日本と「運動」における捉え方が大きく違います。

 

そう考えると子どもたちの遊びも立派な運動になります。むしろ、熱中して遊び込むような活動こそが乳幼児において、最も脳にもいい活動であるのだろうと思います。そういった環境を作っていってあげたいものです。