応答的関わり②

ランドリー・スーザンとスミス・カレンは「応答的」について、4つの定義を出しています。

 

まず、1つ目は「子どもの行動に付随して反応する」ということです。乳児は養育者に対してシグナルを出します。それに対し、養育者が即時に敏感に反応することで、乳児が自分の要求が予想通りにかなえられることを経験するというのです。これは自己有用感につながります。つまり、自分がここにいてもいいという自己肯定感や自尊感情を持つことにも影響が出るということが推測できます。

 

2つ目、「感情的―情緒的にサポートする」ポジティブな感情の入力(暖かさ、微笑みなど)と強いネガティブな行動がないこと(刺激がきつい粗暴な声のトーンや身体的な侵入など)は養育者の関心、受容を情緒的に伝えると言っています。乳児からのサインを養育者に伝えることで、自分の感情を受け入れてもらうという経験をするということですね。こういった関わりを通すことで、子どもの社会的発達(協力、感情の制御など)の発達を促進すると言われています。これは今よく聞く「非認知スキル」にも大きくつながっているのだということが見えてきます。海外の研究におけるすぐれたプレスクールの共通点で「応答的な関わり」が入っているというのはこの非認知スキルに関わるからより注目されているのかもしれませんね。

 

3つ目「子どもが注意を向けていることをサポートする」とあります。そして「乳児が注意をあてていることをサポートすることは、構造を与えたり、乳児の未熟な技能に対して足場を与えているので、高次なレベルの学習や自己制御を促進すると考えられるといいます。二方向のインタラクションでJoint engagementや相互性を促進する、注意を維持することは注意の焦点を移さないで乳児の未熟な注意をサポートする。子どもがアクティブな役割を取り始め。究極的には自分の行動を制御するようになる。言語発達や事物の操作を促進する」といっています。応答的な関わりが安心基地にもつながるということであると読み解けます。安心基地があることで自分の世界を子どもたちは広げていきます。そして、分からないことは大人の力を借りようとして、自ら助けを呼びます。だからこそ、『ともに考え、深め続けること』といった海外における優れた教育にはあるのでしょうね。大人が答えを出すことが求められるのではなく、あくまで主体は子どもであり、その中で、大人がどう関わるか、それは世界を広げることの手助けをすることが重要であるのでしょう。

 

そして、最後に4つ目「発達要求をサポートする言語入力」です。これは「①養育者が乳児の発声を模倣する。養育者が付随的に音声でかえす。②豊かな言語入力(事物や行為やラベルやこれがどのように相伴っているか、機能しているか)を子どもがうけること、また、これが乳児期に特に重要」といっています。つまり、音声言語習得において、養育者が乳児の言葉を模倣したり、応答したり、変換したりすることで言語を習得していく機能があるということが言えるのです。

 

「応答性」というのを4つの定義として見ていくと、いかにこの関わりが乳幼児教育において重要な関わりなのかということが見えてきます。そして、「応答的」というのは、なんでも子どもたちの言いなりになることでもなければ、逆に何も言わないことでもないのです。

 

大切なことは子どもたちの主体性をどう保障するかということが大切なのだろうと思います。そして、子どもたちは主体的に学び、主体的に活動しており、保育者や養育者が教え「なければいけない」のではなく、自ら学んでいるということを信じることが大切なのだろうと思っていなければ「応答的な関わり」にはならないのです。各夕海外の研究における優れたプレスクールの特徴の共通点の三つ目は「すぐれているプリスクールほど、子ども主導の遊びや活動、子ども中心で教師がつなぎ発展させる遊びや活動が多い」という特徴が見えてくるのです。こういったことができるのは保育者自体の子どもに対する保育の視点が定まっていなければできないことなのだろうと思います。

 

ランドリー・スーザンとスミス・カレンのいう「応答的」な関わりのあり方はまさに子どもたち本来の力を引き出すことにつながる関わりであるのでしょう。そして、現在さまざまなところで叫ばれている「非認知スキル」をつけるにあたって、こういった関わりはこれからの保育には必須と言ってもいいほどの能力なように見えてきます。