小学校に向けて

森口氏は思考の実行機能と感情の実行機能が、具体的に子どものどのような行動や能力に影響を与えるかが検討されているといいます。そして、その中でも効果が大きいのが、子どもの就学準備性に与える影響です。就学準備性とは、幼稚園や保育園に通う幼児が、小学校への入学するためのスキルを身につけている状態かどうかということです。最近では「小1プロブレム」などの言葉がある通り、幼稚園や保育園から小学校への移行は子どもにとって大きな問題となります。そのため、幼児期に小学校に入るための準備が必要になってきます。

 

そこで森口氏は就学準備性には大きく分けて2つあると言っています。1つは学力の準備性です。小学校に入ると、国語や算数などの教科を本格的に習うことになります。それらの教科を学ぶためには、基本的な文字や数の知識が必要となってきます。これは平仮名の読み書きや、数を数える能力、簡単な足し算や引き算などが該当します。数多くの研究から、幼児期に思考の実行機能が高い子どもは、就学前後の学力準備性が高いことが報告されているそうです。つまり、思考の実行機能が高いことは、子どもたちの小学校の生活に大きく影響するということです。特に算数やその基礎となる知識の獲得に大きな影響力を持つといいます。

 

さらに思考の実行機能は、社会的・感情的準備性にも関わることが示されています。これはプレゼントをもらったらどのような気持ちになるのかなどのように相手の気持ちを正しく理解する能力や、困った相手を助けるような行動が含まれます。これらの能力は学校生活において、クラスメートや教師とうまく付き合っていくために必須になってきます。思考の実行機能が高い子どもは、社会的・感情的な準備性も高いのです。

 

では、感情の実行機能についてはどういったことが言えるでしょうか。森口氏は例えば、感情の実行機能が低い子どもは、怒りやすく、クラスメートとトラブルになりやすかったり、友だちとの共同作業が苦手で孤立しやすかったりするといいます。

 

このように実行機能は学校生活に大きな影響を与えるということが言えるようです。その中でも、思考の実行機能は学力とも関係があるということも言われており、なおのこと、実行機能の重要性には注目が集まっています。そのため、乳幼児教育におけるこれらの意味合いはしっかりと考えておかなければいけません。確かに、マシュマロテストの対象年齢は4歳児であり、乳幼児教育の期間に入る年代です。そのため、保育所保育指針や幼稚園教育要領には以前の子どもとの適切の関わりに言われていた「応答的かかわり」という言葉が多く出てきます。この関わり自体が小学校に関わると思うと、保育の必要性も大きく見直されていくかもしれません。何においても、保育は「何かを作る」ことや「何かをする」ということばかりが、取り上げられがちですが、それ以上に毎日の何気ない関わりや生活にも大きな意味があるということをよく考えていなければいけないということをよりかんじます。