言葉から環境

赤ちゃんは身振り手振りを通して、養育者とのやり取りができるようになってきます。そののちに、意味内容を持ったことばを理解し、ことばによるコミュニケーションを行うようになります。そして、子どもと大人、その2者関係の外にあって、2人が注意を共に向けている事物の3項関係の成立はことば獲得の基盤となります。

 

トマセロは1997年に、語彙獲得の認知基盤として ①他者が何について話しているのか、その指示対象を認知し、カテゴリーを作ることを可能にする子どもの能力 ②他者が言語の様々な部分を使用している際に、その他者の意図がなにかを理解できる子どもの能力を挙げています。子どもは前言語コミュニケーションでの大人とのやり取りの中で、他者や他者の意図的な動作について深く広範な理解を行い、この上に、語の学習を行っていきます。

 

幼児は言葉を学び始めると同時に、視線の追随、社会的参照、模倣学習をさらに発達させていきます。これらのスキルは、他者とは外界の事物に対する注意や情動や行動について、能動的に追随し、かつ共有することができるような意図をもつ主体であると理解する能力の反映することができます。言葉の獲得は共有した意味や共有した注意の対象をさらに広げ、洗練させていきます。

 

このように言葉の発達ははじめは大人や養育者との身振りや手ぶりといった方法をとって関わりをもたせ、その関わりの中から、次第に2者関係から3者関係、そして、さらにその他者における意図の理解といったことへと理解の幅が広がっていくなかでことばの発達が見えてきます。つまり、ここで言えるのは、ことばは勝手に話すようになるのではなく、その根底には相手に伝えようとする意欲や意図があるからということが分かります。そして、そのためには伝えようと思う相手との関わりや愛着関係が土台に必要であるということも同時に見えてきます。ということは、乳幼児期において、必要になってくる環境というのはこういった関わりのある環境構成がなければいけません。そして、乳児期においてははじめは保育者であるというのは分かります。自分の意図を察してくれる人として大人があるのです。そして、そこから、友だちへと関係性は広がっていきます。

 

特に関わりが始まる1歳児の子どもを見ているとよくわかります。物の取り合いやトラブルも他児がいる環境であると起きます。その中で、自分の欲求が通らないことも起きます。その時に養育者にとられたものを指さしたり、抱き上げてもらいにきたりとサインを出してるのが分かります。養育者はそういった時に応答的な関わりを持たすことで、また、気持ちを切り替えて関わりに行きます。葛藤の中で、自分の意志を伝えることを覚えていき、その延長線上にことばがあるということがよくわかります。ここに、乳児からの保育を受けている子どものほうが言葉の理解が早いのが分かります。つまり、「使う機会」が他児と一緒に過ごすことで必要になるからなのだろうと思います。家庭では母親と関わることが多くおおくは予測できます。そのため、ことばを発さなくてもいいのです。環境の必要性はことばにも表れてくるというのが分かります。