遊びとストレス

遊ばないと社会的スキルが身につかないという考えを裏付ける動物実験の結果があります。1999年に行った研究で、ラットを生後4~5週の最もよく遊ぶ発達時期に2週間隔離しておき、その後に他のラットといっしょにすると、同時期に隔離されなかったラットと比べて社会的な活動が非常に少なかったといいます。2002年の別の研究では幼若時に隔離して育てられた雄のラットから繰り返し攻撃を受けても、正常な回避行動を示さないことが分かった。これが遊びの欠如によっておこった原因が、社会的隔離か、社会的問題かはまだはっきりとはしていないそうです。

 

別の研究では、遊びが、情動反応と社会的学習に関わる「高位の」脳領域での神経の発達を促すことが示されています。戦闘ごっこをすると、新しいニューロンの成長を促進する脳由来神経栄養因子(BDNF)というたんぱく質がそうした領域で放出されることが2003年に報告された。対照群として13匹のラットを3.5日間自由に仲間と遊ばせる一方、同じ期間、別の14匹のラットを1匹ずつ隔離しておいた。ラットの脳を調べたところ、遊ばせたラットに比べて、はるかに高い濃度のBDNFを含んでいた。この論文の共著者であるワシントン州立大学の神経科学者パンクセップは「遊びには脳の行為の領域を社会化する重要な作用があると考えられる」といっています。

 

さらに心の健康にも遊びが極めて重要であることを示す研究結果がある。おそらく、子どもは遊びによって不安やストレスに対処できるようになるのだろう。1984年に発表された研究では、3歳児と4歳児の計74人を対象に、幼稚園の入園初日の不安の度合いを調べました。不安レベルを測る指標として、駄々をこねる、めそめそ泣く、懇願するといった子どもたちの行動と、手のひらの汗の量を用いた。研究者の観察に基づき、子どもたちひとりひとりについて、不安状態にあるかないかを評価した後、74人の子どもを無作為に4つのグループに分けた。

 

半分の子どもたちはオモチャでいっぱいの部屋に連れて行かれ、一人で、あるいは仲間の子どもたちと15分間遊んだ。残り半分は、一人または複数の子どもと一緒に小さなテーブルに座らせ、15分間教師が語る話をきかせました。その後、子どもたちの不安レベルを再び評価した。すると、もともと不安だった子どものうち、遊んだほうの子どもは、話を聞いた子どもに比べて不安レベルが半分以下に下がった(初めから不安を感じていなかった子どもの不安レベルはほぼ同じままだった。)と言います。

 

子どもたちは遊んでいる中で、さまざまな影響を受けているのですね。あそびは大人にとってもストレス解消になるというのはこれまでも話してきましたが、解消するだけではなく、不安レベルに対する耐性のつくということも分かってきました。いかに子どもが自由に発想し、遊ぶことが子ども期には必要でそういった時間を確保すること、保障することが大きな影響をあたえるのかということが分かります。また、この実験において、非常に面白いことが分かってきました。それは遊ぶための関係性と遊びの種類です。