やりがい

5つ目の心得は「意義を共有する」です。職を持って働くということに対して、自分たちが「みんなを元気づけるような仕事」や「社会の役に立っている」という感覚を持つことができるようにするということです。では、誰もが他人と協力し合い、互いにとって利益になるようにしたいと思った時にどうすればいいのでしょうか。意味ある仕事をしたいと思ったときにどうしたらいいのでしょうか。クリスティーン氏は「しかし、自分が努力をしても何も変わらないと思っている人も多い」と言います。これは保育の世界でもよくあることかもしれません。どうしても、保育というのは成績もなく、成果もすぐに見えるものではなく、先の社会に出た時に初めてその成果が見えてくるものだと思います。しかし、それが保育とどう関係するのかというのは非常に関連付けにくく、見えにくいものです。

 

しかし、自分の仕事に意味を感じることができれば、もっと保育はよくなっていくでしょうし、当然、保育者自身も成長していくことだと思います。クリスティーン氏著の「THINK CIVILITY」では「自分の仕事に意味を感じる人は、会社に利益をもたらすに違いない」と言っています。そして、そのためには「誰もが、自分自身が前進していると感じられること、成果を上げていると感じられることが大事だ」と言っています。そして、このことは「社員同士の強固な深い関係を築くことと同じくらいに重要である」とも言っています。

 

さまざまな会社がこういった「社会に貢献している実感」を得るために取り組んでいますが、ジュエリーやアクセサリーを売る企業であるマイ・サン・マイ・ヒーローでは、ボスニア・ヘルツェゴヴィナやウガンダ、イタリア、カンボジアなどの貧しい女性たちの手によってつくられた商品を売り、商品から得られる収入によって、彼女たちは家族を食べさせることができるし、子供を大学に行かせることもできる。そういった彼女たちの写真や映像を見て、彼女たちの物語を読むことで、自分たちの影響を実感しています。

 

国際通貨基金(IMF)でもIMFの統計者や経済学者たちの仕事がいかに世界に大きな利益をもたらしているかを、各国の財務大臣や講演者たちに話してもらうことで、仕事を実感するとともに、IMFの人間に他に何ができると思うかも話してもらうそうです。

 

先ほども書きましたが、保育というのはこういった実感というものを感じにくいものであり、そのため、英語教育や体操教室、フラッシュカードなど、認知的な活動をすることで成果が見えやすくするところも多くあります。しかし、私は乳幼児教育において重要なことは目に見えるものだけではなく、目に見えない非認知能力のほうがよりこの時期にとって重要な意味があると思っています。しかし、そういった能力は測ることが非常に難しいものです。そして、働いている保育者自身も長いスパンで物事を考えていかなければいけません。今、その時期だけの短期的なものの見方で保育をしていくと、こういった力の見え方は薄れてしまいます。「保育者は30年後の社会を見据えて保育をしていかなければいけない」といわれたことがあります。つまり、社会も見ていかなければいけないのです。そういった意味では保育者ほど、広い視野や見通しを求められる仕事はないのかもしれません。