聞く態勢を作る

自分の園にいる子どもたちにおいてもなかなか相手の話をよく聞いて、自分の話をすることが難しい様子をよく見ます。待つということが難しく、口々に話したいことを言うので、こちらの話を聞かせるために大声をあげている職員もよく見ます。これは大人でも例外ではなく、今の時代「相手の話を聞く」ということができない人が多くなってきているのかもしれません。しかし、この能力は社会に必要な力であるとクリスティーン氏は言っています。そして、特にリーダー層にとっては重要な力であり、この力は部下や一緒に働く人たちへの信頼関係をもたらす重要な力であると言っています。このことは自分自身にとっても実感するところです。

 

ではどうすれば人の話を聞くことができるのでしょうか。クリスティーン氏はこの問いを世界中のいろいろな人たちに投げかけてきました。すると、場所、文化に関係なく、返ってくる答えは同じだったのです。それは「まず、聞く態勢を完璧に整えよ」ということだったようです。そのために、「相手に対する質問などは事前にすべて用意しておく」そして、「そこで何を話題にするかも事前に考えておく」そうしておくことで、現場で次はどうしようと考えて立ち往生することは避けられるというのです。

 

クリスティーン氏は相手に自分のなにもかもを向けなければいけないと言っています。そのため。邪魔になるもの(携帯電話など)は側におかないことが賢明だと言っています。関係のない情報をできるだけ入らない工夫が必要なのです。そうすることで、相手と向き合うことができるのです。クリスティーン氏は「礼節とは、根本的には、人間らしく相手と関わるということを意味する」と言っています。大切なのは向き合い方なのです。

 

そして、「話を聞くというのはただ受け身ではない」ということです。あくまで能動的に相手の話をきくのです。そのため、視点は相手のどこが自分と同じで、どこが自分と違っているのかを見極める必要があります。冷静に相手に対しては能動的にすり合わせることが聞くことには重要な意味があります。相手と目を合わせること、相手の感情に合わせて表情を合わせることも大切になってきます。相手の話の内容理解と同時に相手の感情の変化にも注意をする必要があります。

 

返答も大切です。相手の話を自分の言葉に言い換えることも有用です。しかし、相手の意図に外れたことを言うと、かえって邪魔することになります。すぐに割って入るべきではないとクリスティーン氏は言っています。考える時間を相手に与えることで、さらに有用な話がでてくるかもしれないからです。大切なのは相手の様子を見てタイミングよく、相手の的を射た質問をすることが大切なのです。沿おうすることで相手の話の趣旨をより明確にすることができるのです。

 

このようにクリスティーン氏の言うようなことを言葉に起こすのは簡単ですが、いざ実践となるとなかなか難しいものです。つい「聞く」となると、「ただ聞く」だけになりがちです。相手がどういうことを言いたいのか、どこに問題があるかを知るためには「聞く」必要があるのです。短期的な問題解決ではなく、長期的な問題の解決するためには今の現状をしっかりと聞き取る必要もあるのでしょうね。大切なことは「自分の話を押し付けない」ことでもなければ、ただ「聞く」だけでもない。根本にはどちらの意見が大事かというよりも「調和や尊重」というものが土台になければいけないのでしょうね。「人間らしく相手と関わる」というのはそういうことなのだろうと思います。