意識されるもの

ドイツでは、子どもの権利条約の採択によって、子どもの参画を軸においた、「分け隔てなくすべての子どもを受け入れることとされ、関わる全ての人々が参画可能なオープンな社会の基礎となる幼児教師句を体現する場」といった考えのもと「オープン園」といった保育体系の幼稚園や保育園が始まっています。

 

また、バイエルン州においては「オープン園」が広がる主な要因として、2003年に制定された陶冶保育プランの影響が大きいとベルガー氏は言っています。2000年にOECD(経済協力開発機構)の学習到達度調査(PISA)が実施されたことにおいて、ドイツの結果は振るわなかったそうです。低迷する学力にもまして、ドイツの教育専門家にとってショックだったのは、家庭の経済格差に比例して子どもの学力の差が歴然としている点であった。この結果を受けて、乳幼児教育の重要性が再認識され、幼児教育政策へのテコ入れが加速したのです。

 

ドイツは連邦制のため、国としての大枠があるにしても州ごとに保育政策、保育要綱が異なります。その中で、バイエルン州のミュンヘン市はドイツでの唯一の州立乳幼児教育研究所があり、最先端の乳幼児教育の実践を誇っています。さらにいうと、乳幼児教育を超えた学校教育にも最も力を入れている州の一つとされています。そのバイエルンでさえ、2003年に初めて保育要綱である陶冶保育プランが発行されることになったのです。そして、その保育プランはドイツの中でもすぐれたものと認知されています。

 

私が見学に行った頃のドイツの保育園でも、この陶冶保育プランというものを基に保育を行われていました。というのも、見学にいった様々な保育園や幼稚園において、多くの園長先生がバイエルンという陶冶プランがかかれた要綱をもって、園内の説明をしていたのですね。そして、その陶冶プランに沿った説明をしていたのがとても印象的でした。

 

現在、今日本で行われている保育においても、本来であれば、こういった取り組みや解説が行われなければいけません。しかし、未だ五領域ですら、意識されていない園も多くあります。大綱化というのは日本の一つのいいところでもあります。園によって大きな枠組みにとらわれず、各園によって、より良い保育を行うということによっては動きやすい面もあります。しかし、ドイツのこの姿勢を見ていると日本はどこかで乳幼児教育は非常に放っておかれている印象すら受けます。もちろん、指針や要領はあり、それを基に保育はするべきなのですが、それにあまり拘束力もなければ、国や自治体もあまり、介入しては来ません。現場においても、日々の保育に追われるあまり、一つ一つが指針や要領を意識したものというわけでもないように思います。以前、ある会議では「私たち、6領域でならったもんね~」という先生もいるという有様です。

 

この姿勢の違いは一体何なのだろうかと、ドイツに行ったときに感じました。