褒めること・感謝すること

礼節を高める心得の3つ目は「ほめ上手になる」です。何か成果を上げた人に、いつも直接、賞賛の言葉を投げかけるようにすれば、何も言われない場合とは全く違う人になっていくのです。しかし、実際ほとんどの人は同僚の社員に称賛の言葉を投げかけるのは1年に1回でもあれば多いほうではないだろうかとクリスティーン氏は言っています。アダム・グランドとフランチェスカ・ジーノによれば、人はいい仕事をした時に上司から感謝の言葉を掛けられるだけで、自尊心が高まり、自信を深めるといっています。これは他人を信じること、喜んで人を助けようとすることにも繋がると言っています。

 

アダム・グランドとフランチェスカ・ジーノはある実験をしました。二人は被験者に「学生に求職のための手紙の書き方を教えてほしい」と頼んで、その手紙にフィードバックを返します。その後、「フィードバック確かに受け取りました。つきましては、もう一通手紙を書きましたので、こちらも見ていただけないでしょうか」という感謝の無い手紙を書きました。この場合、言われた手紙を見てフィードバックを返した被験者は全体の32%だったそうです。それに対し、「フィードバックありがとうございました。感謝しています」と書き加えると、その数字は倍の66%まで上がったのです。つまり、感謝を言葉で伝えると、自分の希望が聞き入れやすくなるだけでなく、第三者の希望も聞き入れてもらえる可能性が高まったのです。

 

ただ、注意すべきなのは、感謝のされ方にも人によって好みがあるということをクリスティーン氏は言っています。みんなの前でほめられたい人もいれば、それを嫌がる人もいます。言葉で感謝されたい人もいれば、贈り物という形で伝えらえることを好む人もいるのです。クリスティーン氏は時間をかけて、個々の人がどういう感謝のされ方を好むかを確かめておくといいだろうと言っています。感謝をきちんと伝えられれば、相手は自分をより信頼するようになるでしょうし、信頼感が高まり人間関係がよくなれば、仕事でも成果があげられるのです。それは結果的に収入増にもつながると言っています。感謝の意をまめに伝える人は、そうではない人に比べ、収入が約7%多いデータがあるようです。ほかにも、感謝を伝える人はそうでない人に比べて血圧も約12%低いそうで、ストレスも少なく、明朗で身体も健康であることが多いのです。

 

「感謝」といってもなかなか難しいものです。特に何かに必死になっていればいるほど、忘れがちになるものです。しかし、そういったときほど、周りを信じることが大切になってくるのでしょうね。そのためには周りにポジティブなイメージを持っていなければいけません。ポジティブに周りを見ていくことで「与える人」になり、「成果を共有する」ことにもつながります。だから、「褒める」ことにも素直になれるのでしょう。「素直さ」や「誠実さ」というのは、私はヒトと関わる中で必要なことだと思っています。しかし、日ごろのプレッシャーや仕事自体のストレス。さまざまなものを「ひとりで抱えている」と感じてしまうとこの素直さは出てこないのかもしれません。また、比較的最近の人は「人と自分を比較する」傾向が高いように思います。経過や成果を勝ち負けにしてしまうと、なかなか感謝や褒めるといったことも自分の思う優劣によって嫉妬や好き嫌いが出てしまい、できなくなってしまうように思います。また、独りよがりでもいけません。どんな相手に対しても、誠実であり、素直でいたいものです。