無意識の偏見

社会神経学者のジェイ・ヴァン・バヴェル、ウィル・カニンガムが無意識の偏見を抑制する方法を紹介しています。それは「相手と自分の共通点に注目することが有効」と言っています。つまり、相手と自分と共通するアイデンティティがないかを探すことです。

 

このことでバヴェルとカニンガムはある実験をします。それはいくつかの言葉を提示し、それをできるだけ速く「良い」と「悪い」に振り分けるという作業です。そして、そこで個々の言葉を提示する前には必ず、ごく短時間、人の顔を見せることをしました。

 

被験者は白人の男性の顔か黒人の男性の顔か、必ずどちらかを見てから言葉を提示されることになります。すると、被験者の多くは、無意識の偏見を露呈されます。白人の顔を見た後は「良い」、黒人の顔を見た後は「悪い」に無意識に振り分けられがちであることが分かったのです。その後、バヴェルとカニンガムは、前回と同じことをするのですが、この実験の作業にあたって、その作業の開始前に被験者にある情報を与えます。それはすべていずれかのチームに属しているという情報を伝えます。そうすると、白人、黒人を問わず、どの被検者も同じチームであるか、あるいは敵対するチームに属しているということになります。すると、たとえ黒人男性であっても、「良い」といった方に振り分けがちになりました。つまり。自分と同じチームに属していると解ると、人種に対する六時期の偏見を打ち消してしまったのです。クリスティーン氏は無意識の偏見をなくしていくために重要なのは、個々の人の共通のアイデンティティ、グループを見つけることであると言っています。

 

また、あえて自分の偏見が表に出そうな環境に身を置いてみることも必要だとも言っています。自分と異質の人と交流をし、相手への理解を深めれば、偏見は少なくなっていく。互いへの感情はよくなっていくだろうというのです。そのために、具体的な証拠を判断材料にし、特定の材料のみを重要視することを避けます。そうすることで、判断に主観が入り込む余地をなくすのです。なによりも、偏見を減らすには、他人の意見を積極的に取り入れる姿勢も大切です。何か重要な決断を下すときにはひとりで考えず、必ず他人の意見を聞く。調査によると、多様な意見の出るチームの方が、そうでないチームより、より良い、より偏見のない決断を下せることが分かっているそうです。

 

これはリーダーシップにおいて重要な観点だと思います。どうしても、意識や理想が高いとその理想に一つでも近づけようとして、主観的な考え方になり、自分の考えに合わない人を排他的になってしまいます。結果として、変化が起きず、風土が固定化されてしまうように思います。多様なアイデンティティが組織の中であるのは仕方のないことですが、そこでの共有や議論、コミュニケーションといったものがあって、初めて理念が強固なものに近づいていくのだろうと思います。偏見をなくすことは非常に難しい、ですが、共有することや当事者意識を持つことはできます。そうすることで、一人一人の意識の高まりが見えてくることにつながり、結果として良い組織風土が起きてくるのでしょう。