相手を尊重する

礼節ある人間の特徴として挙げられる二つ目の原則は「相手を尊重する」です。「常に笑顔でいる」というよりもより、内面的なものが出てきました。しかし、クリスティーン氏は「成功するために最も重要なこと」だと言っています。会社においては、自分よりも地位が下の人たちとの人間関係が非常に重要になると言っています。そして、このことは創造的リーダーシップセンター(CCL)の調査でも、大企業のトップ3の役職についている人たちが成功するための最も重要なことは、部下たちとの人間関係だということが分かっているそうです。ほかにもコンサルティング会社タワーズ・ワトソンが実施した世界的な調査で、社員の仕事へのやる気を最も大きく左右するのは、上層部の姿勢だということを言っています。

 

上層部が自分たちの幸福に関心を向けてくれているなと感じれば社員はやる気を出しますし、そうでなければあまり熱心に仕事には取り組まなくなるのです。そして、調査の対象となった社員のうち、熱心に仕事に取り組む気持ちでいる人は40%に満たないということが分かったそうなのです。つまり、これはどういったことを意味しているのでしょうか。40%にも満たないということは60%の人が取り組む気持ちではないということが言えるわけで、つまりは上層部の姿勢に不満がある人がそれだけいるということでもあるのでしょうか。

 

このように、3つ目の基本動作の2つ目は相手の存在を認め、尊重するということです。自分より地位が下の人であっても、その存在を認め、尊重しなくてはいけないというのです。クリスティーン氏は「これは簡単そうで実はそうではない。」と言っています。そして、存在を認められていると感じることはとても大事なことです。そして、そう感じるかどうかは、ほんの一瞬の態度で決まることが多いそうです。それは逆に言えば、その一瞬に態度が良ければ、相手を元気づけることもできるのです。

 

そこでクリスティーン氏は「10/5ウェイ」を実践するとよいと言っています。それは誰かと3m以内に近づいたら目を合わせ、微笑みかけ。1.5m以内に近づいたら「こんにちは」と声を掛けるというこころがけだと言っています。そして、人の存在を認めることは、まず、その人が誰かを知ることから始まる。リーダシップを取る者は、その下にいる人たちのことを知らなくてはいけない。他人について知るために、普通の人間よりも多くの時間をかける必要があるのです。

 

これは保育においても大切なことです。子どもを「子ども扱い」するのではなく、人として認めることが重要だと思っています。つまり、ヒトと関わるうえで「人を認める」ということが大切であるのです。しかし、今の時代、そういったことが難しくなっているのでしょうね。その一端に誰かと比較して自分を測る人が今の時代、多いというのがあるように思います。それは自分自身例外ではありません。人に対して、嫉妬であったり、妬み嫉みが起きやすい時代でもあるように思います。そして、何より自分自身に自信がないことが問題になっているように思います。だからこそ、こういった「人を認める」「人を尊重する」ということが難しいのだろうと私は思うのです。そして、その根底には保育や教育、生育歴といったものが大きく関わってきています。画一的で一斉に行われる教育ではつねに比べるのは自分ではなく他者です。そして、人と関わることは少なくなります。つまり、ここでいう「相手を知る」必要がなくなるのです。人との調和というのは学校のいわゆる勉強だけでは得ることができない能力です。だからこそ、乳幼児教育において「自由遊び」というのが非常に重要な意味を持ってくると思います。非認知能力においても、活動以上に「自由遊び」の意図は重要視されるべきものです。日本の教育において、良いとされているのは「班活動」があることだということを聞いたことがあります。これはひとりではなく、人と動くことに良いところがあるのです。成績やテストの点だけを追っていても、ヒトと関わる力は養われません。

 

今、新型コロナウィルスが流行し、人との距離がなかなか取れない時期です。そんな中で、どういった保育を進める必要があるのか、どういった人材が社会に必要なのか。こういったビジネス書は自分の啓発のためでもありますが、その反面、今どういった人材が社会でもとめられ、どういったところで人が悩んでいるのかも見えてきます。