聞く力とその影響

ヒトと良好な関係を作っていく上で必要なことがいくつか出てきました。一つ目は「笑顔」そして、もう一つが「相手を尊重する」つまり、「存在を認め、尊重する」ということです。ほんの一瞬の態度によって、その受け止め方が変わるということが言われていました。そのためには「相手のことをよく知る」必要もあります。相手の反応や質問、疑問点、それらを察知し、適切に返さなければいけないのです。そのために必要となってくる力が人と良好な関係を作るため、礼節ある関わりをするための三つ目の原則「聞く」ことです。

 

クリスティーン氏は「人の話をよく聞くことは人間関係を築き、深める上で絶対に必要なことである」とその重要性を話しています。そして、「熱心に話を聞けば、その人のことを気にかけ、大事にしていること、人間関係を保ちたいと思っていることがわかる」と言っています。話をよく聞いていれば、それだけ重要な情報、アイデアが手に入りやすくなる。それは相手が自分のことを「この人は話を聞く気がない」と思われたら、何かいいアイデアがあっても伝えようとしないし、役に立つ提案もしないだろうというのです。

 

ただ、「人の話を聞く」と一言で言っても、それは楽なことではないとクリスティーン氏は言っています。集中して話を聞くにはエネルギーがいります。話を聞いているつもりが、ついその途中で余計なことをしてしまう人も多いのです。よくあるのが、相手の話をさえぎって自分が話し始めてしまう。相手の話をきくよりも、自分のことを話して優位に立とうとする。割り込んで、誰も求めていない助言をすることもあるなどです。最後まで聞かずに「こうであろう」と勝手に決めつけ、あとは自分が次に何を言うかを考える人もいると言います。

 

なんとも耳が痛い話です。私も否定はできないところが多くあります。最近、ZOOMというパソコンのコミュニケーションツールがよく使われています。以前、他の保育園の子どもたちと自園の子どもたちでZOOMを使った自園紹介をしました。面白かったのはいつもは我先に話を始める子どもたちが、このツールを使うときには話を待たざるを得なかったのです。ZOOMではマイクで音声を拾って、スピーカーから音を出します。そのため、両方がいっぺんに話をすると、混線し相手が何を言っているのか分からなくなります。そのため、会話をするためには相手の言葉を待ちしっかりと聞かなければいけません。つまり、ここで言われる「人の話を聞かなければいけない」のです。自然とこのやりとりが行われるのは非常に新鮮であり、子どもたちにとっては必要な経験だったのではないかと思います。

 

また、この「ZOOM飲み」というのがコロナ禍でも流行っていました。自身も何度かしたことはありましたが、確かに待つことにまどろっこしさを感じることは多々あったのを覚えています。つい、自分が話したいことを話してしまいがちになり、相手の話を最後まで聞くということがおろそかになることが多々あります。たった少しの聞く態度の変化によって人の印象というのは大きく違ってくるのかもしれません。では、どう聞き方を変えていくことが必要なのでしょうか。