貧困への対策

前回、政府の機関やプログラムによって、その場しのぎのバラバラなシステムにより、子ども時代の一部や思春期の一部を断片的にしか支援することができず、それらの管轄がそれぞれ連携不足になることによって、かえって、ストレスがたまったり、疎外感や屈辱を感じることにつながるということが言われました。では、どうしたら低所得層の子どもたちは成功や幸福を手に入れることができるようになるのでしょうか。

 

タフ氏はこういったシステムとは別のものを作り出すこともできたのではないかと言っています。初めは総合的な子ども健康センターだとしても、心的外傷に焦点を合わせ、社会福祉による支援も盛り込んだケアがすべての患者に行われる場所。これは望ましいアタッチメントを築くための親への支援策にもつながっていくことになります。就園前なら、幼い子どもの実行機能の能力と自制心を育てる「心の道具」のようなプログラムなどを使うことも必要です。その後子どもたちを矯正クラスに追い込むような学校ではなく、かれらにあえてレベルの高い課題を課す学校に勧めるようにする必要があります。そこでは教室内で受けている学力向上への助けがどんなものであれ、それを補う形で教室の外からの社会福祉、心理学的な指導、性格形成のための指導による支援策が必要になります。それはポール・タフ氏が紹介したフェンガー高校などで取り入れられたものなど低所得地区の学校に提供されているものが近い形態のものです。高校ではワンゴールやKIPPが実施しているプログラムのようなものであれば恩恵を受けられるだろうとタフ氏は言います。彼らをより高い教育へと導くプログラム、学業面だけでなく感情面、精神面でも大学進学への準備を察せてくれるプログラムが良いのではないかと言っています。

 

きちんとパイプのつながったこうしたシステムを、失敗のリスクの最も高い10から15%の生徒を対象としてつくったら、間違いなくかなりの費用がかかるでしょうが、現行のその場しのぎのシステムよりは安く上がるのではないだろうかとタフ氏は言います。いくつもの人生を救えるだけでなく、資金の節約にもなるというのです。

 

こういったところに関して、日本では「学習指導」と「生活指導」があり、それが実際のところ、多くの学校教育現場において、教育者の負担になっているというのですが、この生徒指導というのが、KIPPのシステムのような大学進学における一つの相談窓口のような意味合いがあるように思います。しかし、大きく違うのが先の学校を見つけることや進むまでのフォローはしても、言った後のアフターケアのようなものはしないのです。しかし、そういったことをしているだけでも、日本の場合は大きく違うのかもしれません。「生活指導」があるおかげで日本の学校教育はAI化されないのかもしれないとも言われています。現在、コロナウィルスで遠隔教育が叫ばれていますが、一方的に教えるだけではAIでできる時代です。タフ氏の話でも「学業面だけでなく、感情面、精神面でも大学進学への準備を察せてくれるプログラムのほうが良いのではないか」というように「感情面、精神面」にももっと目線を持っていかなければいけないように思います。そして、そのためには各教育現場においても、しっかりとした連携が求められるように思います。そして、その連携は「発達」など、「感情面」や「精神面」といった「人格形成」の面にももっと目をかけていかなければいけないのではないかとおもうのです。