日本における貧困1

ポール・タフ氏はハーバード大学を出た生徒の多くが失敗しない人生を選択することや「これをやりたい」という確固たる願いよりも、成功者になれないことへの恐怖に突き動かされていることを紹介していました。そして、多くは個人の満足度や社会的貢献度が高いことが有名ではない職種に送り込まれているということも紹介しています。確かにハーバード大学の学部生なら、性格の強みの獲得に失敗したとしても、心躍ることのない投資銀行の仕事にたどり着くだけかもしれません。しかし、それが逆境や困難の多い、貧困の中で育った子どもたちならどうだろうかとタフ氏は言います。

 

確かに、頭のいい人たちはそれでいいでしょう。しかし、それだけの力がない人間にとってはどうすればいいのかというとその選択肢は非常に少なくなってしまいます。しかし、タフ氏は貧困や逆境のなかで育つ子どもたちがよりよく成長するために社会にも重要な役割があるというのは簡単であると言います。

 

政府が貧しい家庭にどう手を貸すべきかについてはリベラルか保守派かでくっきりと意見の分かれるところですが、何かすべきだという点においては大体どんな人でも賛成します。貧困の影響を軽減すること、若い人々に貧困から脱却するチャンスを提供すること。これは歴史的にみても、橋を作ることや国境を守ることと並ぶ国家の不可欠な機能の一つです。これは日本においても、同様のことが言われています。

 

日経ビジネスの2019年11月19日のJX通信社の松本健太郎さんの記事に日本の相対的貧困率が紹介されています。そこにはこう書かれています。「貧困」と聞いて大勢の人がイメージするのは、アフリカの貧困国のように、極端に背が低くガリガリに痩せ細った子どもたちの姿かもしれません。しかしGDP規模が米国、中国に次ぐ第3位の日本において、そのような光景を目の当たりにすればそれは「事件」です。なぜならばそれは「絶対的貧困」とよばれ、世界銀行では「1日1.90米ドル(約200円)未満で生活する人々」と定義されています。2015年には全世界で約7.36億人いると試算されています。貧困にはもう1種類、「相対的貧困」と呼ばれる指標があります。国の文化・生活水準と比較して困窮した状

態を指し、具体的には「世帯の所得がその国の等価可処分所得の中央値の半分に満たな人々」と定義されています。日本の相対的貧困率は、12年は16.1%、16年は15.7%もありました。約6人に1人は「相対的貧困」なのです。「OECD経済審査報告書(2017年)」によると、日米欧主要7カ国(G7)のうち、日本は米国に次いで2番目に高い比率になっています。

 

日本は相対的貧困においては日本の貧困率は低いとは言えない国と言えるのです。