家庭でのアクティブラーニング

齋藤氏は生活の中の教育はほかにもあると言っています。それは「段取り力」と「コミュニケーション力」です。「段取り力」は「問題を解く」「料理をする」「物語を作る」などの場合でも、必要とされる力です。そして、この力は学校だけではなく、生活のあらゆるところで鍛えることができる実践的な知力でもあると言っています。

 

この「段取り力」ですが、これはつまり「問題解決能力」でもあります。苦手なことをどうすれば解決でき、その解決策の道筋をどう設定し、解決へと導いていくのかを考える力です。齋藤氏は「こうした問題意識の持ち方、解決の段取りを立てるプロセスをじっくり持てるのは、個々の子どもと向き合える家庭教育の良さである」といっています。

 

そして、それと同時に得ることができるのが「コミュニケーション能力」です。親子との対話を中心とした問題解決能力の向上は、コミュニケーション能力の向上にも役に立ちます。話をしながら問題をはっきりとさせ、解決策を出し合う。こうしたコミュニケーションの練習にもなるのです。齋藤氏は「コミュニケーション力は、子どものみならず社会で働く大人にとっても重要な能力である。他者と協働し問題解決に向かうのが企業にとって必須であるとするならば、その基礎になるのがコミュニケーション力である」といっています。

 

これらの力は教科書を記憶し、テストで記憶の再生を行う作業ではコミュニケーション力は必要とされません。これは伝統的な学力ではコミュニケーション力は重要とされていないということを意味しています。しかし、実社会ではコミュニケーション力が求められます。この差を埋めるのがアクティブラーニングでもあるのです。

 

こう見ると、家庭との連携の大切さが改めてわかります。保育施設で起こるコミュニケーションと家庭内で起きるコミュニケーションとはまた違った関係性が生まれてくることが見えてきます。しかし、そのどちらも重要なことは「自分で考える」つまり「主体的」ということが根本になければいけません。齋藤氏が言うように「話をしながら問題をはっきりとさせ、解決策を出し合う」ということが重要なのです。そこには子ども自身の意見も反映されてこなければいけない、でなければ「対話」にならないのです。自分自身で納得した解決方法を自らで設定し、自らその解決法を実践していくということが大切になってきます。

 

よく保育の中で、「選択には責任がある」という話を言うことがあります。ただ、選ばせるだけではいけなく、そこには「責任」があることで子どもたちは自分の選択に向き合い、慎重に考え、答えを選ぶのです。大人が選ばせてしまうと、その責任は大人の方が主体になってしまうのです。そのため、いかに子ども自身に当事者意識を持てるようにするかが大切なのです。大人はあくまでも子どもたちにとってフォローする側であり、アドバイスは必要ですが、主体を大人が取ることはもったいないことだということを意識していなければいけません。このことを前提にすることがアクティブラーニングでも重要な視点でもあるのです。