大人と赤ちゃんの違い

赤ちゃんと大人とを比べた場合、大人の意識というのはスポットライトのように集中したところに意識や注意が向かっていくようになります。それに比べると赤ちゃんはまるでランタンのように周囲をまんべんなく照らすようなものが赤ちゃんの意識であるということが言えます。赤ちゃんは世界の一部だけを拾い上げ、他の一歳を遮断するようなことはせず、すべてを同時に、しかも鮮明に体験しているようなのです。赤ちゃんの脳には神経伝達物質であるアセチルコリンが大量に放出されている一方で、その作用を弱める抑制性の神経伝達物質はわずかなのです。そして、脳も心も、劇的なまでの可塑性を持ち、新しい可能性に大きく開かれているのです。

 

また、赤ちゃんは大人のように無意識状態になることも少ないようです。それはなじみのあるものや熟練して児童的にこなせることが少ないため、馴化された無意識というものがほとんどないからで、気を散らす情報を締め出すことは苦手ですが、その分、広範囲のことを意識するのです。そういった意味では、大人よりも意識していることは多く、はっきりしていると言えます。

 

大人は何かに集中しているときに意識が鮮明になり、その注意が脳の可塑性と結びつきます。何かに注意すると、心も脳も変化するのです。このことを踏まえて考えると脳の可塑性、つまり脳の変化は注意をすることで起きると考えれますし、注意は鮮明な意識であるということも言えます。つまり。赤ちゃんは大人よりも意識が鮮明であるということが言えます。

 

このことから見えてくるのは赤ちゃんが大人より馴化や集中の度合いが低く、脳の可塑性に富んでいることは間違いないことです。赤ちゃんにとっては未知の世界は大人よりもずっと広く、学習される脳も大人よりはるかに多いのです。赤ちゃんが生まれて、初めて世界と触れ合うわけですから、大人のように集中して学習するというだけでは学習しきれないのでしょう。赤ちゃんがキョロキョロと周りを見ているのはまるで、コロコロと床のごみを拾っていく道具のように、様々な情報をあたまの中で処理し、脳はその都度変化を起こしているのですね。

 

ゴプニックはこの様子をさらに大人であればどういったことになるのか?と実に今日意味深い考えに進めています。心と脳を赤ちゃんと同じような状況に置いたら、意識はどうなるのか。ぼやけてしまうのか、それとも鮮明になるのか。赤ちゃんの意識は広く、かつ、鮮明に意識されているということはどういったことなのか。

 

赤ちゃんから見える景色というものが分かると保育においても、関わり方や見方はまたかわってくるかもしれません。