大人の意識と子どもの意識

これまで、意識と注意の関連から内因性注意と外因性注意の紹介をしました。人は外の世界の要因から注意する外因性注意があり、外の対象に対して注意を向けます。これに対し、内因性注意は自発的に目的に向けて意識を向けることがあります。また、これらの反応においては脳の神経伝達物質による影響が大きいことも同時に見えてきました。常に脳は注意を向けるにあたり、抑制と興奮のバランスで決まってくるのです。

 

では、赤ちゃんの注意や意識といった物はどのようなものなのでしょうか。このことに関して、赤ちゃんの意識体験については、正確なことはまだわかっていないのですが、赤ちゃんの注意力、脳については多少のことが分かってきています。それにおいて、赤ちゃんや幼児の意識は大人と似ているともいえ、違うともいえます。

 

一昔前は赤ちゃんの注意は完全に自動的、反射的で、高次の脳中枢は使われていないと考えられていました。このことにおいてゴプニックは「赤ちゃんには脳がないという神話の一つに過ぎない」と言っています。しかし、そんなことはありません。赤ちゃんが何かに注意を向けるときは、大人と同じように対象の情報を取り入れていますし、意識もあると思われます。そして、わずかに予想とズレた出来事をみたときは、大人と同じ種類の脳波が現れますし、対象をじっと見つめ、特徴を目で調べ、その間、心拍数が低下するところも大人と同じです。これらの徴候はどれも、赤ちゃんが大人と同じように、その出来事を鮮明に意識していることを示しています。その出来事が面白ければ、驚くほど長い時間見つめ、しばらくすると飽きてしまい、目をそらします。これは大人も赤ちゃんも同じなのです。

 

このプロセスはまさに「馴化」のプロセスですね。わずかに予想とズレた出来事を見ると、赤ちゃんの注意はそれにくぎづけになり、予想通りだった出来事よりも長く見つめます。赤ちゃんは予想外の出来事に対してはとても貪欲に見えます。

 

このような赤ちゃんの意識を利用すると、赤ちゃんがどんな風に世界を把握していくかを知ることができます。また、こういった貪欲さが必要であるのは、人間が予想外の出来事にあるチャンスというのは若い時期ほど多いからです。そして、それは外界の物とはかぎりません。心の中にも予想外の事態が発生が発生するということに他ならないのです。

 

こういった実験をもとに見ていると、赤ちゃんにおいても、言葉には表さず、態度で示しますが、大人と同じように感じ、不思議に思い、周りの環境に能動的に働きかけ学んでいるということが分かります。また、最後の文にある「予想外の出来事にあるチャンスというのは若い時期ほど多い」というのはまさに経験値の問題なのでしょうね。大人は赤ちゃんと比べ、経験が多くあります。その分、様々な新しいことをその都度経験していることにもなり、「馴化」された出来事は赤ちゃんと比べて多いのは当然のことです。このように考えると、赤ちゃんが様々なことを考え、環境の中で自発的に感じることが多い状況を作り体験を通したことが多くできるような関わりをしなければいけません。だからこそ、「応答的な関わり」というものが重要視されるのでしょうね。