赤ちゃんの意識

赤ちゃんの様子を観察していると、実に落ち着きなくキョロキョロしています。いったい、なにを見ているのかと思うくらい、一つのことに集中するよりも、いろんなところに注意を向け、何かを必死に学び取ろうとしています。そして、大人が話している様子をジッと見たり、声を上げて自分の方に注意を向けさせたりと大忙しです。なぜ、こういった行動をとるのでしょうか。このことはこれまでのゴプニックの話にもあったように、世の中の因果関係を赤ちゃんは吸収するために、モデルとして大人を見ているのでしょう。ずりばいができるようになると、いろんなところに向かい、手あたり次第に手に取ったり口に入れたりするというのはこういった触覚や視覚を使って、物の性質を確認しているのかもしれません。これらの行動はおとなにとっては非常に厄介です。怪我もしそうになりますし、埃をついたものを口に入れるのは不衛生です。しかし、こういった行動自体が百聞は一見にしかずで、赤ちゃん自身の体験を通した学びであるとするなら、その行動をゆったりと見ていたいものだと感じます。

 

ゴプニックはつぎに赤ちゃんの意識をより深く注目していきます。赤ちゃんはどんなふうに世界を体験するのか。赤ちゃんや幼児に注目することで、意識のどんな性質がわかるのかということを見ていきます。では、その「赤ちゃんの意識」とは実際にどういったものなのでしょうか。

 

そもそも赤ちゃんは大人の意識の構造は違ったものがあるといいます。大人は、注意を向けた対象をはっきりと意識します。そして、何らかの対象に注意を向けると、脳は特定のニューロンの働きを高め。変化を促す神経伝達物質を作ります。ところが、赤ちゃんの注意は、大人の注意とは体系的な違いがあって、脳の働き方も大人とは違います。そうであるならば、赤ちゃんの意識も、大人の意識とは体系的な違いがあるのではないかとゴプニックは言います。

 

哲学者の多くは赤ちゃんが仮に意識を持つとしても、そのレベルは大人よりも低いだろうと考えてきました。確かに、赤ちゃんは言葉も話せず、筋道を立てて問題を解決したり複雑な計画を立てることはできないですね。しかし、赤ちゃんの研究していく中で見えてきたデータを見ていくとあることが分かってきました。実際のデータから導かれるのは赤ちゃんの意識は大人よりも低いだろうという回答とはまったく逆で、赤ちゃんの意識は、すくなくともいくつかの尺度では大人の意識レベルを上回ると言っています。

 

では、「意識」というのはどういったことをいうのでしょうか。「意識」は注意と密接な関連を持っているとゴプニックは言います。では、その注意とはどういったものがあるのでしょうか。