提言の問題点

小西氏はテレビ視聴の提言について「発語は早ければよいというものではない」と言っています。それは発語が遅い子どもは「スロースターター」「レイトスターター」といって、むしろ後から急速に言語の数が広がることがあるからです。昔は「おばあちゃん子は言葉が遅い」とか「一人っ子は言葉が遅い」と言われていたそうで、発語の早さで善し悪しを決めたりはしなかったのです。発語の時期は、標準の範囲内であれば問題はなかったのです。こういった背景を考えないまま、テレビ視聴は発語を遅らせるという印象だけが前に出てしまうとかえって親の不安をあおるだけになります。これが小西氏野言う提言の問題点の一つです。

 

二つ目問題は「日本小児科医会の提言が、1999年にアメリカで出された小児科医らの警告に基づくものである」ということです。このことはあくまでアメリカで行われたもので、十分な検証がされていないのです。また、毎日新聞が出した、赤ちゃんが視線を逸らすということについても問題点があります。これは赤ちゃんの発達において生後三か月以降の赤ちゃんは「サッカード」と呼ばれる目をそらす状況にあるのです。つまり、このことだけを見ても「テレビの影響を受けていると断言できるものではないのです。

 

これは生後1か月の赤ちゃんは物の全体を見ます。物の存在を見ます。そして、ものを見てもすぐに目をそらす傾向にあります。生後2か月頃の赤ちゃんは物に焦点を合わせると、しばらく目をそらさずにじっと見つめます。そして、3ヶ月以降の赤ちゃんは、視線が急に動かす運動ができるようになり、視線を急に動かす目の運動できるようになり、物と物と見比べることができるようになるのです。このことから見ても、4カ月児が目をそらすのは視覚とそれに関係する脳機能が正常に発達しているあかしでもあるのです。こういった問題点を踏まえて考えると単にテレビの視聴によって起きているということを安易に信じるのは問題であると言えるのです。

 

ただ、テレビ視聴の問題は確かにあるようで、小西氏が過去に見た3歳半の男児は、言葉が少なく、この年齢にしては理解力にかけていて、他人との意思の疎通が難しい様子でした。しかし、自閉症や軽度発達障害の症状も見られなかったので、日常の生活を母親に聞いてみたところ、日中のほとんどをテレビを見て過ごしていたそうです。そこで小西氏はテレビ視聴を減らし、視聴以外の時間に人との関わりを増やすように助言をした結果、会話やコミュニケーションに改善の兆しが見られたそうです。確かにテレビ視聴が子どもに影響を及ぼすことは確かにあるのです。

 

そんな中、今回の小児科学会の提言において「見せすぎが良くないのは当然」という話の一方で、「育児そのものを否定された気がする」と敏感に受け取った親もいたそうです。というのも、最近の日常生活において、幼い子どもが親のそばにくっついていると家事ができないことや、天気の悪い日に外に出られず子どもがストレスを発散する場がない時にテレビは、唯一親が少し目を話しても安全だという親の意見もあるのです。一概に「テレビは発達に影響がある」と言われてしまうと忙しい家事の中で、テレビを利用するといった環境下で育てている親は罪悪感を感じてしまうのと同時に親を追い詰めてしまうことにも繋がるのです。