外への働きかけ

赤ちゃんは手や口を使って、身体を触ったり、嘗め回したりすることで、自分がどういうものかを認識します。そして、目や耳を使って、他者や周囲の世界に興味を持ち、認識し、積極的に関わろうとしていると小西氏は話しています。このことを考えてみると、非常に興味深いのは赤ちゃんは「大人が与える刺激によって反応する」だけではなく、「自分でも積極的に世界を見ようとしている」ことです。決して「赤ちゃん」だからといって「受動的」な存在ではなく、「能動的」にも世界に関わりかけていますし、自発的に刺激の選択を市、自分の意志や興味で周囲と関わろうとしているのです。

 

赤ちゃんは保育において、「並行遊び」といわれています。関わることは少ないと言われていました。しかし、実際の現場を見ていると赤ちゃんは子ども同士でジッと見ていたり、手や足で子どもに触れています。この姿を見ていても、赤ちゃんは何かをしてもらうのを待っているだけとは思えません、。最近では、「赤ちゃんは白紙で生まれてくる」という説は否定されています。赤ちゃんは赤ちゃんなりの持っている能力をフルに生かして、世界に働きかけているのですね。

 

東京大学教授の汐見稔幸氏は、乳児期を人間の認知システムの内的な構成という視点から考えると、①世界がどうなっているか、②世界を把握するにはどうすればいいかという2つのことが作られている時期だと言っています。そのため、「乳幼児期が能動的に5官と身体を駆使して対象に働きかけ、対象からの反応を受け取りながら、対象を認識していくということが不可欠である」と述べています。

 

これをうけ、小西氏は人間は他人との相互作用によって何かを学び、成長する生き物ですから、自分から積極的に触ることも大切な発達過程の一つといえるのではないかと言っています。

 

この「相互作用」というのはよく乳児においては母親が中心になることが多くあります。確かに愛着関係というのは赤ちゃんにとっては非常に重要な関わりであり、この愛着関係があることで、安心基地となり、外の世界に向かうようになります。つまり、何かあったときに戻ってこれる場所が必要になります。そのため、親の愛着というのは非常に重要です。しかし、愛着を中心として、外に働きかけるときに他の人的環境も重要な気がします。それは祖父母といった大人でもありますし、兄弟といった子ども関係もあります。特に最近の少子高齢化社会においては子どもが少なくなり、家庭でも兄弟関係がない子どもが多くいます。

 

赤ちゃんにおいても、人との相互作用があることが見えるのを考えると、愛着関係に目を向けるのではなく、赤ちゃん同士の関係性にも大きな影響があるように思います。