能力別クラス編成

アンドレアス氏は能力別クラスを編成する学校システムにも言及しています。というのも、日本でも多くの特に高校では〇〇コースといったようにクラス編成が行われていることが特に私立では多いように思います。これはすべての生徒のニーズに最適化できるように考えられてきた結果です。これは日本だけではなく、各国でも取り入れられているようですが、多少の形態は違うようです。いくつかの国では、すべての生徒に同様の機会を提供する非選択的かつ包括的な学校システムを採用し、生徒の能力、興味、背景のすべてに対応するように各教員と学校に任せた。つまり、生徒の成績などによって、教員がクラスを振り分けるというものです。そして、他の国々では、学校間と学校内のクラス間で、学力や特定のプログラムへの関心に基づいて生徒をクラス分けすることによって多様性に対応する方法をとっているとしています。これはどちらかというと生徒の方に選択権はありそうですね。伝統的には、前者が公平性を提供し、後者が質と卓越性を促進すると言われているそうです。

 

能力別等で生徒をクラス分けする背景にあるのは、互いの学習への関心を強めると、生徒の才能が最もよく発達するという仮定があるからです。しかし、クラス編成の方法は国によってかなりの違いがあります。PISAの成績上位の国は、能力や進路などのグループ別のクラス編成を行っていません。成績上位の国は、すべての生徒に学ぶための平等な機会を提供しているのです。生徒の能力差が少ないクラスや進路等のグループ別クラスの学習成果が必ずしも良くないことは、他の研究とも一致する。能力や進路等のグループ別のクラスは、カリキュラムや指導に適切な調整が加えられたときのみ効果的であるそうです。

 

アンドレアス氏は「これまで私たちの社会と経済は、比較的少人数の教育を受けた人や集団がいれば十分であり、一部の生徒だけが学校で成功すればよかった。近年は学校での成績低下が社会経済的コストを伴い、社会的に不公平なだけでなく、非効率になっている。現代の教育システムと社会では、公平性と包摂性が不可欠である」といっています。

 

これからの社会は人工知能によって大きく仕事の内容が変わってきます。型にはまった仕事は特にこれから無くなっていくと言われています。例えば、電車であると運転手はなくなっていくだろうと言われています。現にもうすでに自動運転の電車もあります。東京では東京オリンピックまでにタクシーを自動運転にするというニュースまで出ていました。つまり、単純な労働力はロボットによって代替されていく時代になっていくのです。そして、それは「ロボットを使う側」でなければ、職を失う可能性が出てくるのです。それと同時に、失業者になってしまうと社会構造さえ支えられず、社会的格差も大きくなっていくことも予想されます。なおのこと、限定された現在のような年齢別におけるクラス構造は一見平等のように見えて、理解度を度外視して、自動的に繰り上げられていく構造は、一見公平に見えて、不公平なのです。今後はそれぞれにあった教育体系がより求められる時代になってくるように思います。ただ、考えられるのはそれは今でいう「成績」が尺度ではなくなってくるかもしれません。先ほどの、電車の話ではないですが、運転手はなくなっても、車掌は残ると言われています。不測の事態に対応するためには、まだ人の力が必要なのです。それは車両システムというだけではなく、乗っている人への対応であったりします。つまり、臨機応変にその状況にあった適切な行動をとれる柔軟性のある力がこれからは必要とされるのです。そして、それを得るためには多様な能力をもった人と関わる機会が必要になってくるのかもしれません。