クラス規模

つぎによく上がってくるのが「クラス規模」です。以前、ドイツやオランダの保育現場を見ていると子どもたちのクラス規模は大体15人ほどだったのが、とても印象的でした。日本に比べると、海外の方が一つのクラス規模というのは少ないように思います。小学校においても、オランダのイエナプラン校では、異年齢で12~15人ほどの異年齢の子どもたちが一つのクラスの中にいるような様子でした。日本でも、クラス規模について、配置基準というものがありますが、果たして、クラス規模と学習成果とは関係があるのでしょうか。

 

アンドレアス氏は「政治的にクラス規模の縮小はよく議論されるが、それが学習成果を向上する最良の方法であると示す国際的な証拠はない」と言っています。それだったら、その代わりに良い教員に高い給料を払った方がよいかもしれないと言っています。実際、PISAの成績上位の教育システムは、クラス規模よりも教員の質を優先する傾向があるのです。成績上位の教育システムでは、小規模クラスと教員への投資のどちらかを選ぶとすれば、いつも後者を選択しているのです。

 

ただし、他の条件が同じであれば、たとえば、教員の給料が同じであったりするのであれば、より効果的で新しい教育実践の機会を広げ、クラス規模を小さくするほど学習成果は向上するのは確かだそうです。クラス規模が小さいほど、しっかりとした教育実践ができるというのです。しかし、それはしばしば間違った予算の使い方だとアンドレアス氏は指摘しています。なぜなのか、それは「政府は予算を一度しか使えないから」です。もし、クラス規模を縮小すれば、教員の給料をあげたり、教員に授業以外の重要なことに取り組む機会を与えたり、生徒の学習時間を延ばすための予算が少なくなるのです。一度もらえる予算を上手に消費するためには、クラス規模を小さくする方に予算を掛けるよりも、教員の保障、授業の充実に予算を掛ける必要があるというのですね。

 

このように小規模クラスの利点を示す根拠がないにも関わらず、多くの国が引き続き、その優先度を高めています。教員、保護者、政策立案者はより良い、より個別最適化された教育の鍵として小規模クラスを捉えているのです。2005年~2014年の間に小規模クラスは増えてきています。しかし、ほぼ同時期にOECD加盟国の教員の給与は平均6%あがってはいても、3分の1の加盟国では教員の給与は下がったのです。中等学校の教員はほかの大卒フルタイムの労働者の88%の給与しか支払われていないのです。

 

日本は教員の給与に関しては、低いのは今に言われたことはありません。保育者ともなるとなおさら低いのが現状です。そのため、給与面に不安があり、辞めていく職員も中にはいます。お金の掛け方というのはなかなかに難しく、雇う立場となると、そのやりくりはシビアなものになります。子どもに対して、適切な大人を雇おうと思っても、人件費がかかることが多くあります。予算と教育保育というのはなかなかに難問なのでしょう。