これからの資質とこれからの先生

アンドレアス氏は著書の中で度々、知識を得ること、成績を得ることも重要なことだが、これからの時代では、より協同的であり俯瞰して実務をおこなうような人が必要になると言っています。そして、これからの時代はイノベーション、つまり新しい価値を見出さなければいけない時代になります。そのイノベーションは孤立した個人の成果ではなく、知識を動員、共有、統合された成果です。つまり、人と協同する能力が重要になってきており、学校は生徒が現代の生活で多元的共存性を自覚して成長することをより良く促す必要があるのです。多様な価値観を受け入れ、融合させることで新しい価値を見出す人材がこれからは必要になってくるのです。そのために、協同を教え、その価値を理解するとともに、ひとり一人の学業成績を達成し、生徒が自分自身のために考え、他者のために行動できるようにすることが学校に必要とされる教育だと言ってます。

 

しかし、現実のところ2015年のPISAによる最初の「協同問題解決能力」の調査では、集団力学を意識し続け、目的達成のための障害を克服し、他者との意見の不一致を解決する行動をとる必要があったとはいえ、比較的シンプルな内容の問題解決のタスクを完了することができた15歳の生徒はOECD加盟国平均で10人中1人より少なかったそうです。

 

しかし、より一般的には、要求されるスキルの変化が社会情動的スキルの重要性を高めてきたといいます。つまり、社会で必要とされるスキルにおいて、先に話した人と協同できるスキルというものがより重要視されていると言っています。目標を達成し、他者と共に生きて働き、感情をコントロールするのに関係するこのスキルには、忍耐、共感、他者の視点、思慮深さ、倫理、勇気、リーダーシップ、などの性質が含まれるといいます。アンドレアス氏は実際にそのような性質を育成する際立ったエリート校を見てきましたが、幅広い目標を不可欠なものとして掲げてきた教育システムはないと言っています。そして、大多数の生徒にとって、学校での人間性形成は教員の優先事項であるかどうかによる運の問題であるというのです。

 

このことは非常に重要な問題を投げかけているように思います。言い換えると、子どもの人間性というのはその時に関わった先生次第ということです。どれだけ、その先生が教育するうえで、成績やできることよりも、人間性を重視しているかということ、子どもたちそれぞれの子どもたちに興味を持ち、心から向き合っているかということが試されているのだといいます。そういった意味では、保育者や教師ほど社会的情動スキルがなければいけないのかもしれません。