質?量?

PISAの調査は子どもたちの学習成果とこれまでの教育システムにおいて信じられていたことに疑問が出てくることが見えてきました。社会経済的背景やクラス規模などが学習成果に関係するということがこれまでも紹介してきました。ほかにも「学習時間が多いほど成績が良くなるのか」ということも挙げています。

 

このことは学校システムによって、特に授業時間後の学習にどれだけの時間を費やすかが大きく異なるそうです。ある教科に対する学習時間が長くなるほど、その教科の学習成果が向上する傾向があるからなのですが、この点について、国際比較をしてみると、その関係は逆転します。授業時間と学習時間が多い国は。PISAの成績が悪かったのです。それはどうしてなのでしょうか。

 

これは単純な理由です。学習成果は常に学習機会の量と質の結果であるからです。教育の質を一定に保ったまま学習時間を増やせば学習成果は向上します。その一方で国が教育の質を向上させれば、生徒の学習時間を増やすことなく、より高い学習成果が得られる傾向にあるのです。つまり、量を増やすことで学習成果が伸びることはあるのですが、質を向上させることで、量を増やすことなく、成果は伸びるというのです。

 

このことはPISAの調査結果を見ると考えさせられます。例えば、日本において科学的リテラシーは韓国の生徒とほぼ同じ得点です。しかし、全教科の学習時間を合算すると、日本の学習時間は週に約41時間(学校28時間。放課後14時間)に対し、韓国は週に50時間(学校30時間、放課後20時間)です。逆もあります。2015年のPISAの調査では、中国(北京、上海、江蘇、広東)とチュニジアの生徒は学校で週30時間と放課後27時間と同じくらいであったが、科学的リテラシーの平均点は中国が531点に対して、チュニジアは367点でした。この二つの調査の結果が意味しているのは学習時間以外に学校システムの質と生徒の学習時間の有効利用、放課後の学習機会の質が影響していると考えられるのです。

 

そして、ほとんどの保護者は学校で確かな学問知識とスキルを身につけると同時に学業以外の活動に参加する時間があることを望むとアンドレアス氏は言っています。演劇や音楽、スポーツ等を通じて社会情動的スキルを発達させ、彼らのウェルビーイング(すべてが満たされた状態)を望むと考えているのです。

 

最近では、「副教科」の重要性も言われているようです。学習の中心となる5教科(国語、数学、理科、社会、英語)だけではなく、美術や技術、音楽などがあることでより成績が良くなるということが言われているようです。このことを見ても、学習というものがなにをさしているのかを考える必要があるのかもしれませんね。どうしても、学習成果を測られるのが「点数」「成績」ではありますが、それだけにこだわっても結果として伸びてはいきません。学ぶ意欲や質、そういった抽象的ですが、心情に則ったものがなければ、結果として身につくものではないのでしょう。モチベーションや動機がなければ、人は学べないのですね。