大人へのあこがれ

2017年4月29日のダイアモンド オンラインのWeb記事に日本の高校生や中学生を対象とした「大人へのイメージ調査」がありました。そこでは高校生だと大人が「疲れている」「大変そう」と感じている人が90%。「楽しくなさそう」73.5%「暗い」67.6%という結果が出たそうです。中学生だと「大変そう」87.5%「疲れている」88.5%「楽しくなさそう」66.5%、「暗い」61.5%。大人に対してかなりネガティブなイメージを持っているということがわかります。さらに「大人を尊敬できない」という質問に対して高校生は56.9%、中学生56.0%とほぼ半数の子どもたちが「尊敬できない」と感じているのですね。実際のアンケート結果ではあるのですが、実に悲しい結果です。しかし、世の中のニュースを見ていても、企業での不祥事や汚職、スキャンダルや犯罪、ネガティブなニュースがあふれていますし、スマホやテレビ、パソコン、SNSといった情報が取りやすいツールがあることでより、取り込まれやすい時代なのだと思います。

 

麴町中学校の工藤氏はこの学校での最上位目標を「すべての子どもたちにとって『世の中まんざらでもない!大人って結構素敵だ!』と思える学校」と言っています。その言葉の裏には子どもたちの「自己肯定感の向上」というものの課題意識があるのだそうです。それは世の中の報道でのネガティブなニュースは実社会の一面を映しているだけに過ぎないのも事実であり、自分たちの身の回りに目を向けると、自分らしさを発揮して活躍するモデルとなる大人がたくさんいるということに気づき、そうありたいと思えるような人になってもらいたいという思いから、この目標になったのでしょう。

 

そのために、子どもたちを自律させることが大切なのです。何か課題に直面したとき、どうすれば解決できるかを自らの頭で考え、周囲を巻き込みながら解決へと導いていくことが必要だと言います。そして、そのためには「世の中はまんざらでもない。大人って結構素敵だ」と思える環境作りが必要だと言います。逆に「世の中はろくなもんじゃない。大人なんてなりたくない」と考える人間は、自力で解決する姿勢を放棄し、誰かのせいにすると言います。

 

そうならないためにも大人は子どもに手を掛けすぎず、自分で考え、判断、決定、行動させる機会を与えることが大切で、大人がきめ細やかに手を掛ければ掛けるほど自律できなくなることを大人たちは今一度、全員で認識する必要があると工藤氏は言います。

 

子どもの主体性を持たせることは結果として子どもたちの自己肯定感にもつながっていると工藤氏は言います。私もその通りだと思います。自分で考え、選び、達成することで人は達成感を感じます。その逆に、誰かに示され、やらなければいけないものをして、できたとしてもそれは達成感ではなく、安心感になってしまうとも言います。では、保育をしていく中で「達成感」を持たせるにはどうしたらいいのか、自分で選ぶ経験を多くするにはどうしたらいいのか、そのとき保育者や大人はどのような距離感を子どもたちと取らなければいけないのか。子どもたちは十人十色であります。その子にあった距離感を見つけることはなかなかできるものではありません。だからこそ、保育は面白いと感じますし、とても誇り高い仕事だと改めて感じます。