状況としての「場」

人との関わりの中で私は話すことよりも聞くことの方が難しいように思います。これは人のタイプにもよるのかもしれません。話すのが得意な人ほど、傾聴するというのはなかなか簡単にはできないものです。「傾聴」や「アクティブ・リスニング」というのは今読んでいる「職場のストレスが消えるコミュニケーションの教科書」という本を読んで初めて知りましたが、「傾聴」という言葉は保育の中でも子どもに対して大人が耳を傾けると気に必要なことであると言われていて、知ってはいました。しかし、この本には傾聴には正しいやり方と手順があり、それが多すぎて実践するのは難しい人も多いと言っています。そのうえで、聞くコツとして3つの行動があると言っているのです。これはこれまでの傾聴とは何が違うのでしょうか。どのようにシンプルなのでしょうか。

 

まず、きく際に意識すべきことが3つあると言います。①姿勢を向ける。これは単純に相手に体を向けるということです。話を聞くときに相手が斜め前に座ることがあります。それはおそらく心理的な距離や警戒の現れであるのですが、首だけを向けるのではなく、体ごと向けたほうが望ましいということです。つまり、相手としっかりと向き合う意思表示ということでしょうか。また、このときメモを取ることも相手にとっては「証拠を残される」ということで抵抗がある人もいるので注意です。

 

②呼吸を合わせる。人は難しく、視線だけを取り上げても、人によっては目を合わせると威圧的に感じる人もいれば、目線をそらして話すと、向き合ってくれていないのではないかと思う人もいるのです。そのため、武神氏はカウンセリングにおいて目で見ることよりも、呼吸を合わせることを意識しているそうです。呼吸を合わせようとすれば、必然的に相手の口元や胸・肩の動きを見ることになります。相手を注視することにもなり、余計なことに気を取られないで済みます。

 

③順番に聞く。これはいきなり本題に入るのではなく、相手が答えやすい質問から、聞いていきます。職場のストレスや悩みのことは警戒してなかなかその話題には繋がらないので、話しやすい会話から本題に入っていく必要があるのです。もちろん、時間的な制約があって本題から始めざるをえない時もあるのですが、徐々に外側から順番に聞いていく方が相手が話しやすくなるのです。

 

あくまでこれは一つのテクニックとしての関わり方であって、身近でよく話すような人であったら、こういった順番は前後していくことになると思います。ただ、これらのことは自然と行っていることかもしれません。むしろ、意識しすぎてしまうとかえってわざとらしさが出てしまいかねないようにも思います。あくまで相手から本題に入るまでに「話しやすくするため」に状況としての「場」を温めておくということが重要だということですね。