「知らない」大切さ

武神氏はアメリカで1967年に発表された「The Social Readjustment Rating Scale」において「社会的にどういったことがストレスになりうるか」という内容を紹介されています。これは過去6か月にどんな出来事があったかをチェックしていって、それぞれの点数を足してストレスの度合いを判定するというものなのですが、その一番点数が高いのが「配偶者の死」で、次に「離婚」というのはわかります。しかし、面白いのは「結婚」や「配偶者との和解」というのも高い点数が当てられています。そしてそれぞれの点数の合計が300点以上の場合は「メンタルヘルス不調になるリスクがかなり高い」と言えるといった一つの指標がつくられました。先ほども紹介しましたが、結婚や配偶者との和解においても、高いストレスがあるというのは驚きです。しかし、確かに「マリッジブルー」という言葉もありますし、環境の変化において人はストレスを感じることはありそうですね。この表を見ているとそういった環境の変化へのストレスはほかにも「妊娠」や「家族数の変化」もストレス要因として、点数が高く設定されています。

この指標はあくまで個人の自己評価によるものですが、武神氏はこの指標において、「では、このリストはあなたが想定した相手にして考えてみてほしい」と言っています。そして、当てはまるものには「〇」、当てはまらないものには「×」、わからないものには「△」をつけてチェックしてもらうとどうなるかを促してます。当然自分事であれば「〇」か「×」になります。そして、他人においては「『△』の数を数えてほしい」と言います。そうすると自分に親しい人や知っている人なら「△」が少なくなるでしょうし、そうでなければ「△」は多くなります。当然、そうなることは当たり前のことなのですが、ここから見えてくるのは「△」がある時点で「相手のことはわからない」ということです。つまり、相手を「~だろう」と考えることや「~に違ういない」と結論つけるのはよくないというのです。そして、「~かもしれない」と考える必要があるということです。それが相手を「知る」ことにつながるといことがわかるのではないかというのです。

 

「他人のことがわからない」と知っていることがとても重要になのですね。そして、“知らないことを知っている人”は「~だろう」という決めつけではなく、「~かもしれない」という思考回路を持っているのです。これが「みる技術」を持っている人が身につけているマインドの一つ「知る」ということなのです。そして、リーダーシップのある上司やメンタルヘルス不調者を出さない部門の上司は、そういう発想ができる人なのだろうと言えるのです。

 

最近、このことにつながることがたびたび働いている中でよくありました。たった一つ自分の目線を変えるだけで人の見方は変わるものであるということを実感しました。そして、その目線を持つためにはいくつかの条件があることにも気づきました。それは「自分に余裕があること」「相手の話を聞くこと」「相手に任せていること」「物事を大きく見ること」という自分の心に余裕があったときに違った目線で見れることができていたように思います。結局のところは「相手が何を言いたいのか」といったことを考えていくことから見えてきたように思います。そういった「思いやり」が根底にないとネガティブな思考に引っ張られていくのかもしれません。そして、そういった余裕を作るためには相手を信じることも重要なことですね。