場の設定

武神氏は上手に「きく技術」を使う人たちは、人前で悩み相談に応じたりせず、どこか落ち着いた場所に移動したり、余裕のある時間帯に改めて話そうと考えます。つまり、話を聞く「場」を作るということです。たとえば、それはカウンセリング室や個室のある店であるかもしれません。または、相手の都合のいい17時以降や昼休み時間といった時間の問題もあります。こういったように相手と自分にとって話しやすい、聞きやすい“場”とはどのような状況なのかを考えてみる必要があります。それは空間的な場、時間的な状況な場といった状況によって「場」が落ち着く場なのかどうか変わります。結局のところ、「場」の重要性は相手の話を聞くにあたり「相手が安心して話せるような場」にするための配慮を持つことということです。そのため「ここで相手は安心できるのか?」を意識する必要があります。

 

人によってはカウンセリングルームを使ったり、アロマをたく人もいるかもしれません。椅子や机をはさむといったように物理的な距離感をもたせるかもしれません。武神氏は実際の産業医としての職務においては、言葉で相手の安心感を得ることを意識していると言っています。そして、初めて産業医面談に来られた方に、常に最初に次の3点を説明すると言っています。①面談内容は、意志の守秘義務があるので、職場には内容であること。②面談内容で医学的に深刻な問題がない場合は、会社には“健康相談”や“過重労働面談”をおこなったという記録のみが残ること(つまり、他の内容は残らない)③仮に何らかの医学的状況で、産業医から会社に何かコメントして配慮を求めたほうがいいと判断したときは、必ず相談者に「何を言っていい」「言ってはダメ」など相談して、会社に開示する内容を決めることといったように説明することで、相手が安心して話せる「場」をつくるというのです。

 

メンタルヘルス不調者を出さない上司やリーダーシップのあるひとというのは、自分のやりやすい枠組みや場づくり、雰囲気作りができているのです。そして、それは何も相手だけの問題ではありません。自分自身においても、緊張しないような場づくりをする必要があります。こういったお互いにとって緊張しないやりやすい雰囲気づくりをつくることがまず、「きく」というために必要になってくるというのです。確かに、話すときにどこで話すかは非常に気を使います。相手にとって聞かれたくない話もあるでしょうし、逆にこちらも言いにくい話があった場合、伝えづらい環境になる場合もあります。そして、その場所によっては、冒頭にあったように時間的なものが十分に取らなかったりすることもあります。「場」の設定というのは意外と重要であるということは確かに分かります。

 

そして、こういった「場」づくりをしたうえで、いよいよ「きくコツ」の話になります。