「ちょっといいですか」

「職場のストレスが消える コミュニケーションの教科書」という武神健之さんの本を読み進めているのですが、リーダーシップをとることにおいて、メンタルヘルス不調の人を出すことは職場においては非常に痛手になります。この本の初めに「最近の人は少し注意をすると、会社をすぐ休むようになる」というような実例が紹介されていました。また、前回紹介したようにストレス反応がメンタルヘルス不調につながってしまうのは孤立したコミュニケーションや相談できない状況に陥ったときに起こりやすいというのが見えてきました。

 

特に最近では若者のコミュニケーション能力が低くなっているのではないかということが言われています。確かにそういったことは言えるのかもしれません。しかし、そうはいっても、組織を作っていかなければいけません。そのため、リーダーシップをとるうえでは相手よりも自分が変わるということが求められるように思います。そして、そのための「みる・きく・はなす」という技術の実践が上司には重要だと武神氏は言っています。

 

武神氏は「ちょっといいですか?」の言葉の中に上手なコミュニケーションにつながるものがあると言っています。この「ちょっといいですか?」の裏には3つの意味が隠されているというのです。1つは「気になる場合」仕事をかかえ、しんどそうなときに該当します。2つ目が「聞かれた場合」部下が自分に相談に来るときですね。3つ目は「期待したい場合」たとえば、メンタルヘルス不調者がいる部門の上司がなかなか聞く耳を持っていないといったように、相手に行動の変化を求めたいときです。なぜ、「ちょっといいですか」という言葉が武神氏が重要な言葉としているのかというと、こういった質問の裏には悩みが隠されていたり、そこを察知してこちらが声を掛けるからです。そのため、こういった言葉はただ単に相手に声を掛ければいいというわけではなく、「何が伝わったのか」ということが大切です。大切なことは相手の主体性の発揮や関係性の強化、メンタルヘルス不調の予防という観点です。コミュニケーションそのものではなく、コミュニケーション後の感情にフォーカスを当てます。

 

そして、大切なのは「相談した」ということではなく、「相談してよかった」と思ってもらうことが上手なコミュニケーションと言えるのです。こういったやり取りをするためには、自分の言いたいことを伝えるだけではうまくいきません。相手がどういったことが聞きたいのか、どういった言葉を期待しているのかといったことをピンポイントで察していかなければいけないのです。このことはなかなか難しく、相手をよく見ていないと理解していくのは難しいことです。そこには「共感する力」や「察知する」ということが求められます。そして、それ以前に、相手に対して誠実にそして真摯に向き合うといった姿勢も大切です。

 

「みる・きく・はなす」という技術はそういったことを踏まえたうえで関わる大切さを必要としています。では、武神氏がいう「みる・きく・はなす」という技術は具体的にどういったことをいうのでしょうか。