男子脳と女子脳の進化

男性と女性の脳の使い方が違うということは広く知られていますが、そこには進化も関わっているのではないかということを藤森平司氏は著書「保育の起源」の中で語られています。そこでは神経生理学者の北澤茂の日本経済新聞の掲載文を要約して紹介しています。そこには「人類の長い歴史では育児、子どもの面倒は女性が担ってきた。言語能力が未発達で泣いたり片言しか喋らなかったりする幼い子どもの意図を読み取って、コミュニケーションをとる。赤ちゃんに抑揚豊かに語りかける。右脳を使いその能力に長けた女性のいる集団のほうが子どもの言語能力が発達し、集団としての力をもつ。そんな流れがあったとしても不思議はありません。」

 

また「脳の言語機能は左脳というのが100年以上続いた通説でした。朗読の声を聞かせてみると、確かに男性はほとんどが左脳だけで話を聞いている。ところが、大半の女性は話を聞いているときに右脳の対照的な部位も使っている。時間的に短い音や単語レベルの言語処理はもちろん左脳ですが、時間的に長い文章全体の理解となると左右両方の脳を使っているのです。」つまり、使用部位の違いは、長い間女性が担ってきた育児にあるではないかというのです。続けて「男性と違い、女性は腕力にものをいわせるわけにはいかない。対立を極力回避して賢く生きることができるよう、話し方から相手の心、気持ちをしっかり読み取る能力を高める方向にいったとも考えられます」とあります。確かに私も妻と話をしている時を考えてみると、私は論理的に話をするのに対して妻は感覚的に話をします。妻のほうが右脳派だということはこれまでの夫婦の話でも出ていたのですが、どうやらその通りなのですね。また、女性は確かに大昔では男性が狩りに行っている間、家族や部落を守らなければいけません。そのために団結しなければ守れないというのもあったのかもしれません。

 

北澤氏はこの男性と女性の違いを理解することが相手を認めることにつながると言っています。「違いから言えるのは、お互いの理解が大事ということです。男性は時に女性が論理的に話をしないと言ったりします。でも、実際は全体の状況が見えているのは女性なのに、男性は左脳で言葉通りにしか話を聴く力がなくてイライラしているのかもしれない。女性も男性は相手の気持ちを読むのが不得意なのでデリカシーに欠けると分かれば、鷹揚に慣れるでしょう。」と言います。「ざっくりと言ってしまえば、相手の気持ちを読むのが得意なのが女性。一方男性は左脳だけを使い、抑揚とか連想にとらわれずに、言葉通りに受け取って判断する。その場の空気に左右されず、冷静で決断力があるともいえるし、鈍感と言ってよいかもしれない。個人差があるからあくまで平均的な話ですが」と話しています。そして、「お互いに知って補い合うことが何よりも重要でしょう」と語っています。

 

これらの内容はヒトという生物が生存戦略を駆使し、今のように生き残っていくためには非常に重要な脳の発達だったと思います。先ほども言った通り、女性は部落や集団を守るためにはコミュにエーション能力は高くなければいけなかったでしょうし、男性は狩りを集団で行うためには言葉通りに受け取り、冷静な決断力が即座に必要とされることがおおかったでしょうから、必要な発達がそこにはあるように感じられます。そして、その女性と男性がお互いバランスを取りながら集団を形成していくのを考えると、そのどちらの存在は子どもにとっても必要になってくるのだと思います。