赤ちゃんと進化

そもそも人類は二足歩行になったがゆえに産道が非常に狭くできています。そのため、あまり脳が大きくならないうちに出産し、乳児を母親が大切に育てていかなければいけません。しかし、出産適齢期の女性は人生の中でも体力的にはベストコンディションであるため、社会を維持するための働き手としての役割もあります。また、二足歩行になったため、肉食動物の餌食になってしまう危険性もあります。これらの要因のために、できるだけ短期間に多くの赤ちゃんを産むようにしたい。基本的に一産一子である人類は一度に多くの赤ちゃんを産むことができないので、この悩みに対する答えとして毎年出産するという方法を選びました。そのため、早く離乳し、次の子どもを産む準備を始めなくてはなりません。

ということで、人類の離乳は、5か月ごろから始まり12か月ごろに完了し、もう次の年には次の赤ちゃんを産むことが可能になってきます。早く離乳するためには様々な工夫が要ります。授乳期から普通食への移行が早いためにその間の食事が必要になってきます。そのため、人間は調理をし、食べ物を加工するようになりました。しかも、赤ちゃんでも食べられるものにするために火を使います。様々な生物の中で人類だけが火を使って調理をすることができるので、早い離乳が可能になりました。

離乳においてはチンパンジーは5~6歳、オラウータンの離乳は7~9歳です。生まれた瞬間から離乳までチンパンジーやオラウータンの赤ちゃんは母親だけに抱っこされて(同時にしがみついて)育ちます。当然、離乳するまでの間、お母さんは次の子が産めません。このように人間の離乳は他の霊長類よりも早く次の子どもを産むために離乳が早くなっているというのです。しかし、同じ霊長類の中でもゴリラだけは少し早く3~4歳で離乳し、ゴリラのお母さんは上の子が3歳になると次の子を産むことができます。そして、ゴリラの研究からゴリラが早く離乳し、次の出産ができるようになったのは、上の子の育児をオスのゴリラが手伝うからだとわかってきました。これらのように生物学的に近い仲間であるこれらの動物たちに比べてみても、人間の1年という出産サイクルが非常に短いことだとわかります。早々に離乳したと言っても1歳児の赤ちゃんです。次の子が生まれるとなると母親一人では手が回りません。そのため、人類は家族で育児をすることにしたのです。早く離乳した赤ちゃんは父親やきょうだい、祖父母などに抱っこされて育つようになります。

そのため、生まれた赤ちゃんが何かをつかもうとしたり、手のひらに何かが当たると反射的にそれを握る行動をしたり、すぐにそうした赤ちゃんの手の反射恋宇津尾がなくなったりするのは、こうした人類の育児スタイルに由来していると考えられているそうです。また、赤ちゃんがあおむけになって寝ることにも、だれにでも抱かれる体勢という意味があるのです。

このように保育の起源では紹介されていました。赤ちゃんの行動には進化の過程が垣間見え、赤ちゃんが大人に対して能動的に働きかけているということが見受けられます。そして、その進化の過程でヒトは社会を作っていくのですが、そこにも赤ちゃんの存在は大きく関わっているのですね。赤ちゃんが未熟で生まれてくる意味、その裏に隠されていたヒトの進化、ヒトの活動に意味はないということを感じます。