共通点と愛着

大人における愛の理論でも、乳幼児期の体験が影響することがいえるようです。また、セリータ・チェンとその同僚たちが行った調査では自分たちが感じている愛が、後々まで無意識のうちに微妙な影響を起こしているということが見えてきました。この調査では大学生を対象に自分が大切に思っている愛する人を1人選び、その人の特徴を用紙に箇条書きで書きます。さらに別の用紙に愛してはいないけれど知っている誰かの特徴も箇条書きにします。その数週間後、同じ学生たちを対象に、他の学生が書いた人物描写を読ませ、内容を飲み込んだ後に、実際にあって、どう感じるかを話してもらいました。

 

その際、他の学生が書いた2番目の調査の特徴の中に、その学生の愛する人の特徴の多くを潜り込ませます。すると、愛する人との共通の特徴を読んだ時の学生の反応は、そうではない特徴に対するものとは大きく異なりました。まず、愛する人と共通点を持つ人は、他の点でも愛する人に似ていると想像する傾向が見られたのです。他者に愛する人との共通点以外のところまで描写していたのです。

 

さらに、愛する人との共通点をもつ人への態度にも、愛する人に抱いている気持ちが反映されたのです。つまり、母親と中のいい学生であれば、母親と共通点が多い人とあってみたいという傾向があったり、母親に小言を言われるような学生は、母親と似た人と会うことに不安を感じていたのです。こういった反応は関心のない人物に似た描写を読んだときには示されなかったのです。

 

こういった傾向はよくありますね。人がうわさ話や陰口に振り回されたり、人の評価をしてしまったりするというのはこれと同じようなことが日常でも起きているからなのだろうと思います。それほど、人は相手に対して、見通しを持ち、想像しながら人と関わることを行っているのだというのです。

 

幼児期に形づくられた愛の理論は、大人になってから他人に抱く期待にも影響を及ぼしているようです。また、それは後に自分の子どもへの接し方にも影響が出てくるようです。ゴプニックが紹介している研究では、初めて出産を控えた女性に面接し、子どもの時代のとりわけ愛着に関わる話を聞きました。その後、生まれた赤ちゃんの別離行動がどんなふうになるかを観察すると、それは母親の子ども時代の愛着パターンにそっくりだったそうです。つまり、それは子どもの深層心理の中に母親の親の影響があるということが、見えてくるのです。