マインドフルネス

最近、保育園や幼稚園などで「茶道」を行っている話を聞くことがあります。「茶道」と言うとかなり行儀や作法があるように感じますし、それこそ「待つ」ということを子どもは意識していかなければいけないように思います。これと同じように最近のビジネスマンに流行っているのが「マインドフルネス」です。具体的には「瞑想やヨガ」を指すことが多いですが、自分の身体や精神、呼吸などに注意を向ける活動のことを指します。

 

最近、森口佑介著の「自分をコントロールする力 非認知スキルの心理学」(講談社現代新書)を紹介していますが、森口氏は最近、タイの共同研究者たちとマインドフルネスが子どもの実行機能を向上させるかを検討したそうです。マインドフルネスは先ほども紹介したように、身体や精神に対して集中することや、今という瞬間に集中することを重視しているため、自分をコントロールする実行機能を向上させると考えられています。

 

森口氏はタイのマヒドン大学分子生物科学研究所の研究者から、タイの子どもは実行機能に大きな問題を抱えているため、この能力を育てるためのプロジェクトを手伝うことになります。そして、タイに訪れたときに衝撃を受けたそうですというのも、研究者らの調査によると、タイの子どもの約30%が実行機能に問題を抱えているというのです。つまり、3人に1人の計算になります。森口氏の知り合いの研究者によれば、タイの子どもは、目の前の快楽に飛びついてしまい、勉強ややるべきことをすぐにおろそかにしがちで、特に学校での授業が成り立たないということです。また、違法薬物に手を出す子どもが多く、国家的な問題になっています。そのため、その研究者らは、政府や企業を巻き込んで、実行機能の発達の支援をするためのプロジェクトを開始しました。

 

そこで森口氏はタイの保育園で、マインドフルネスが子どもの実行機能を向上させるかどうかを調べました。マインドフルネスの訓練として、マヒドン大学の大学院生が、既存のトレーニングと、タイの僧侶たちが行っている瞑想とをブレンドして、新しいプログラムを開発しました。プログラムは毎日やる短い活動と、週に3回、各40分間の保育プログラムの一部としてやる長い活動です。これを8週にわたって続けました。前者は毎朝1~3分間、自分の呼吸に対して、集中するという活動です。保育のプログラムは以下の4つのパートから構成されました。①集中力:呼吸に注意を向け、少しでも気が散りそうになったら、呼吸に注意を向けなおします。②感覚:自然に感謝し、味覚や嗅覚などを存分に発揮させます。③運動:自分に身体感覚について学び、身体をどのようにしたらコントロールできるかを学びます。④感情:感情について学び、感情をコントロールする方法について学びます。これらの活動を通じて、自分の体や感情についてしっかりと認識し、そのうえでそれらをコントロールできるように学ぶことを目的としています。

 

これらの前後に、感情の実行機能と思考の実行機能を測定します。その結果、マインドフルネスはとくに感情の実行機能に非常に有効であることが示されました。感情をコントロールすることを目的としているので、これは当然の結果と言えるのかもしれません。また、この際、思考の実行機能も一部の子どもでは向上しました。