睡眠と実行機能

森口氏は管理的な子育てにおいて、家庭のルールが子どもの実行機能に影響を与えているということを言っています。そして、ある程度の大人の管理的な子育ての必要性にも言及しています。

 

このことにおいて、森口氏はルールに関連して、2つの生活習慣の影響を紹介しています。その二つというのが睡眠とメディア視聴です。睡眠というのはこれまでにも言われることが多い内容です。発達障害にも睡眠が関わるということが言われています。そんな睡眠ですが、なぜ、それほどまで人の体に影響するのかというと、睡眠は脳にとって非常に大事な生活習慣だからです。睡眠中、脳は起きている間に損傷があった箇所などを修復したり、起きている間に覚えたことを記憶に定着させたりすることが報告されています。また、寝る前に難しい問題に取り組むと、起きた後にその問題に対してする解決策をおもいつくなど、記憶や学習に非常に重要であるということもわかっているそうです。よく受験生においても、一夜漬けするよりもしっかりと夜は寝たほうが良いというのはこのことが言われるのはこういったことを指します。

 

では、実行機能に関してはどうでしょうか。実行機能の脳内機構である前頭前野は、睡眠中に活動が著しく低下することが知られていると森口氏は言っています。つまり、睡眠不足によって前頭前野を休ませることができなければ、起きている際の行動にも影響が出るというのです。睡眠不足は、学業不振につながりますし、それ以外にも精神疾患、情緒不安定、肥満などにも結び付く可能性があります。そして、このことは特に子どもにおいても顕著なのです。幼児期には2~3割の子どもが睡眠に関する何らかの問題を抱えているという統計もあります。なかなか寝付けなかったり、寝ている間に歩いたりしてしまうのです。最近の子どもたちの入眠時間は確かに遅くなっているように思います。それは親の就労にも影響を受けているのでしょう。

 

実際、テルアビブ大学のサダー博士らは、小学校高学年の子どもを、ランダムに早寝群と夜更かし群に分けて、その前後に思考の実行機能のテストをしました。その結果、早寝群は成績が向上するのに対して、夜更かし群は成績が低下することが報告されました。小学生の研究に比べると数は少ないのですが、乳幼児期の睡眠もやはり実行機能に重要な影響を与えることが示されています。カールソン博士らは1歳時点における乳児の睡眠の質を測定し、その後の実行機能の影響を検討しました。この研究では、1歳時点における夜の睡眠時間が長ければ長いほど、その子どもが2歳になったときの思考の実行機能の成績が高いことを示しています。

 

ここであることが見えてきました。昼寝を含めた子どもの一日の睡眠時間の長さは実行機能と関係しないという点です。夜に子どもが寝ることが重要ということを意味しています。

このように睡眠と実行機能は密接に関係しているということが言われていることが分かった来ました。これまでも「睡眠」というもののとり方は人の体に大きく影響を与えてくれるというのは大人においても、子どもにおいても、言われています。心身のリフレッシュにおいても、成長ホルモンが出るのも、睡眠中なのです。いかに子どもたちの睡眠が大切なものなのかということが分かります。そして、それは先の社会における能力にも大きな影響を与えることになるのですね。