勤勉性と自制心

パーソナリティ心理学の領域で、勤勉性における第一人者のブレント・ロバーツによると、勤勉性の数値が高い人々の性格にはいくつかの共通点があると言っています。それは几帳面である、よく働く、人望がある、社会通念を尊重するといった傾向があるというのです。しかし、もっとも大切な共通要素は自制心が強いことだろうというのです。

自制心といえば、その価値において疑いをもっているのは、前回紹介した、マルクス派の経済学者たちだけではないそうです。しかし、『性格の強みと美徳』のなかで、ピーターソンとセリグマンは「自制心が強すぎたとしても、ほんとうのところ不都合なことなど何一つない」と論じています。自制心は強さや美しさや知性のように才能の一種であり、マイナス面などない。つまり、自制心はあるほど良いものであるということなのです。

しかし、カリフォルニア大学の心理学者 故ジャック・ブロックを中心とする反対派は過剰な自制心は過小な場合と同じように問題になりうると主張しました。自己抑制の強すぎる人々は「過度に圧迫されている」のではないかというのです。そういう人々は「決断に困難を覚え、必要もないのに満足を後まで我慢したり、喜ぶことを自らに禁じたりする」というのです。つまり、おとなしい人は自分から動くことをあまりしたがらない人もいますし、引っ込み思案な人は自制心がありすぎるのではないかというのです。こういった研究者たちによると、勤勉性の高い人々は古臭く堅苦しい、神経症的で心配症で抑圧されているというのです。以前の「学校は労働者階級の人を作る」というのと同じですね。

確かにブロックの発見にも一理あるとタフ氏は言います。勤勉性が強迫神経症につながる可能性があることは確かにあります。しかし、そうは言っても、ものごとの良好な結果と自制心との相関を示すデータを無視することができないのです。その後、ニュージーランドで2011年に1000人を超える若者を30年にわたって追跡した研究の結果が発表されるとさらにその根拠は強化されていきます。この研究結果は、子ども時代の自制心と成人してからの成果の明確なつながりを改めて詳細に示すものでした。

心理学者アヴシャロム・カスピ、テリー・モフィット、ブレント・ロバーツをリーダーとする研究者のチームは、対象が3才から11歳の間にあらゆる種類のテストやアンケートを実施して子どもたちの自制心を測定し、その結果をまとめてそれぞれの子どもの評価を割り出しました。そして、対象が32歳になったときの調査で、子どもの頃の自制心のスコアがさまざまな面で成人後の成果の予測になっていたことが分かったのです。子どものころの自制心のスコアが弱いほど、32歳の時点で喫煙率が高く、健康に問題を抱えている割合が高く、信用度が低く、法律上の問題を抱えている確率が高かった。影響が甚大なケースもいくつかあったのです。

子どもの頃の自制心のスコアが最も低かった人々は、もっとも高かった人々に比べて3倍の確率で犯罪に関わっていました。アルコールやドラッグの依存症である確率も3倍。一人で子どもを育てている確率は2倍だったのです。

確かにいくら強迫神経症につながる可能性があるとはいえ、それにあまりある影響が自制心がないことで起きてしまうのであれば考えものです。どのように自制心を考えていくことが大切なのでしょうか。