ターニングポイント➁

キーサはアンジェロの事件のあと決意を固くしていきます。彼女は「最悪のことはもう過ぎた。今はプラスの園を探している。今のままでいるのはもううんざり、だからいろんなことを変えるためにできることは全部するって決めた」その後、彼女は学校に行くようになります。当然勉強は遅れていたのですが、大都市の高校にある制度で、成績が足りない場合に短期間でそれを埋め合わせるシステムがあるのを利用し、卒業します。彼女はこのころ勉強と名のつくものをするようになって以来初めて真剣に課題に取り組みました。夜間学校には週5日間参加し、朝から晩まで学校にいることも度々あったそうです。その後、フェンガー高校を卒業し、公立の短大に入学します。そして、そこで美容に関する学位を取るための勉強を始めます。

 

キーサが高校を卒業する数カ月前、タフ氏はフェンガー高校のカフェテリアでキーサにあい、将来の計画について聞いたそうです。その時彼女は短大を卒業後美容師のライセンスを取ったら、フルタイムでラニータ・リードの美容院に雇ってもらえるといったそうです。そして、「今から5年後には、自分で稼いだお金で自分ひとりのアパートメントに住んでいると思う」といっており、「妹たちも、何かあればあたしのところに来ればいい」とも話していました。タフ氏はこの自分の現状を抜け出す道を探すだけではなく、家族の子とも忘れないということに感心したそうです。そして、「毎日見ているものよりもっといい人生があるって、妹たちに教えたい。」というのです。「そうしないと、あの子たちはどうせたいしたものは手に入らないと思ってしまうかもしれない。だけど、人生にはもっとたくさんのものがある。本当に、はるかにたくさんのものがある」

 

彼女はまさに幼少期に逆境のある生活をしていました。これまでの話であると幼少期に逆境のある生活をしているとストレス対応システムがうまく働かないという話でした。ではなぜ、キーサはそんな幼少期にあり、それでもストレス対応システムがうまく働くようになったのでしょうか。

 

タフ氏は「幼少期の支援こそが重要であるとする科学的根拠に異を唱えるのは難しい。子どもの健康的な発達において、最初の数年は非常に大切だ。子どもの将来を良いものにするための唯一の機会のようにも見える。しかし、感情的、心理的、そして神経科学的な経路をターゲットとしたプログラムの一番有望なところは、子どもが成長してからでも充分に効果がある点だ」と言っています。そして、この点に目を向けることは学力面のみの支援よりもはるかに効果が高い。知能指数だけを見るなら、8歳を過ぎたあたりからなかなか伸びなくなる。しかし実行機能やストレスに対処したり強い感情を抑制したりする能力は、思春期や成人になってからでも時には劇的に改善できるというのです。

 

10代はどんな子どもにとっても難しい時期です。ましてや、逆境に育った子どもたちの場合、思春期が最悪のターニングポイントにもなりかねません。幼児期の傷が良くない決断をうみ、良くない決断が破壊的な結果を生むこともあります。しかし、キーサのように逆に思春期は逆のターニングポイントにもなりえます。最もは深い変化の時期でもあり、その時期にラニータ・リードとの出会いのような機会があることで軌道修正し、成功へのコースに変化することもあるのです。

 

これまでの内容では幼児期の環境による影響が大きいということが特に言われましたが。、思春期にもう一度、変われるチャンスがあるのですね。よくその時代にグレていた悪たちが良い先生と出会うことで構成するという話を聞きます。ここでのラニータ・リードのように自分を受け入れてくれる「安心基地」との出会いは、子どもたちにとってとても重要な存在であり、将来においてもとても重要な出会いになっていくのだと思います。まさに、人間形成とは保育や教育に携わる期間において起きるのですね。