主体性と上司

そもそも主体性についてですが、原則として「あなた(自分)が持っている主体性以上のものは相手には持たせきれない」ということがあると言っています。つまり、あなたの器以上の主体性は、部下に教えることはできないというのです。その上で、武神氏は部下に主体性を持たせるには4つの要素が必要であると言っています。それは「みる力」「構築力」「教育力「負う力」です。これらの力が非常に大切な要素であるというのです。

 

まず、1つ目の「みる力」ですが、それは「任せられる人を見つける力」です。任せられることが決まっているのであれば、それにふさわしい人を見つける力です。2つ目の「構築力」は任せる仕事のやり方を伝える力です。つまり、上司自身がノウハウをしっかり構築できている必要があります。3つ目の「教育力」は任せられる人を育てるための教える力です。これは「教えるスキル」という教育力だけではなく、時間的な余裕も含まれます。つまり、上司自体が余裕がなく、「見て学べ」という姿勢だと、部下が主体性を発揮するようにはなかなかならないというのです。4つ目の「負う力」は任せた仕事の最終責任やリスクを負える力があるかどうかです。部下に仕事を任せてうまくいけばいいのですが、どうしてもうまくいかない時があります。そういった失敗したときに、責任を自分で負う力があるかどうかです。責任を負う力がない上司ほど、部下に任せようとしません。そして、任せることが怖いと部下の主体性が発揮される機会は生まれないのです。

 

これら四つの要素はどれも上司に必要な力です。この力がいかにバランスよく備え持っているかで、その人の器が決まってくると言います。このように見ていくと「はなす」という行為は、自分が持っているものですが、自分が持っているもの以上は話せないのです。自分の持っているほめる技術以上のものは出せませんし、自分の持っている主体性以上のものを相手に求めることはできないのです。

 

自分の持っている主体性以上のものを相手に求めることはできないというのは何とも考えさせられえます。しかし、考えてみると組織をマネジメントするということはそういったことなのです。これまでも武神氏が言っていたように「人を変えることはできない」のです。ということは、自分のスタンスを変えるほかないのです。だからこそ、その集団をまとめる上司によって職場の雰囲気が違っていくのだと思います。そして、ここで紹介した4つの要素を持つようになるためには、そこで働く人とのコミュニケーションは非常に重要になってきます。任せるうえで、どういった結果を出してほしいのかといった仕事の目的や目標、そして、その仕事に対する理解も含めて、自分自身の仕事に向き合う器の問題も大きくなります。結局のところ、自分自身がどう仕事に向き合っているのか、それが働く人たちが幸せになるようなものなのかということが問われるように思います。