赤ちゃんの統計学

赤ちゃんが言葉を習得していく過程の中で、「馴れ」というものにジェニー・サフランは注目しました。赤ちゃんは音節と音節の組み合わせのパターンの出現確率が分かってくると前回出てきて例でいうと「プリ」と「ティ」はセットであること「ティ」と「ベイ」がセットでないことを理解していたのです。そこには「馴れる」といった「馴化」という現象があるのではないかというのです。赤ちゃんが馴れたものより新しいものに関心を持つという心理傾向を利用したのです。

 

この実験では、たとえば、赤ちゃんに同じ音を何度も聞かせると、そのうちに飽きてそっぽを向いてしまいます。ところが、新しい音を聴かせると再び耳を傾けるようになります。サフランはこの原理を使って、赤ちゃんが確率パターンに反応するかどうかを調べました。

 

たとえば、様々な音節を意味も切れ目もなく羅列してものを赤ちゃんに聞かせます。一つの例では「ガ」は必ず「バ」の直後、「ダ」はいろいろな音節に続くようにし、「ダ」の前が「バ」である確率は3分の1としました。そして、赤ちゃんに様々な無意味な「言葉」、「バダ」「バガ」などを単発的に聞かせます。すると、「バガ」よりも「バダ」のほうに強く反応したのです。この「馴化」といった現象は言語の習得だけに限らず、音階や目に見える物体においても、8か月の赤ちゃんは同じように確率パターンを判別したのです。

 

また、ブリティッシュ・コロンビア大学のフェイ・シューの実験によって、9か月の赤ちゃんはいくつかの重要な統計学的概念を理解できることを示しました。まず、赤白をまぜたピンポン球が入った透明な箱を赤ちゃんに見せます。球はほとんどが白で赤はわずか、またはほとんど赤で白がわずかにしています。次に箱の側面を覆い、中が赤ちゃんに見えないようにします。それから実験者は箱から5つの球を連続して取り出します。取り出す球は赤4つに白1つか、白4つに赤1つになるようにします。白の多いほうの箱から赤が4つも出るというのは、意外な結果ということになります。

 

赤ちゃんも同じように思うようで、白の多い箱から赤が4つ出たときの方が、同じ箱から白が4つ、あるいは赤が多い箱から赤が4つ出たときよりも実験者を見つめている時間が長かったのです。これは9か月の赤ちゃんでも、可能性の確率を考えていたということが分かります。

 

9か月の赤ちゃんが統計学の基本である確率パターンの判別ができるということが分かりました。次に、確率パターンから因果関係を推定することも赤ちゃんはできるようになるようです。ゴプニックはそのことについて、紹介しています。