自分の心の制御

子どもが自分の心を制御する「実行制御」ということを紹介しています。このことは以前、森口佑介さんの著書でも紹介した「実行機能」のことであり、1960年代に行われたウォルター・ミシェルが行った「マシュマロ実験」が紹介されています。マシュマロやチョコチップクッキーを使って、実験者は実験室から出ていきます。その際、「クッキーを一枚食べるか、それとも、数分我慢することで二枚のクッキーを食べるか」ということを選択させるというものでした。そうすると、子どもは目をつぶったり、中には眠ってしまう子がいたりと、子どもたちの待つ様子であったり、気をそらす様子が見られます。そして、この実行機能が備わっているかどうかは、将来の子どもの生活について影響があるということも言われています。

 

また、この実験からは3~5歳にかけて、自制が聞くようになるということも分かってきました。ゴプニックはこういった研究において「子どもは成長するにつれ行儀がよくなるというのではなく、ある時期から行儀がよくなる理由も明らかにしています。」と言っています。それと同時に「子どもは単に意思が強くなるというよりも、自分の心に働きかけ、自分の行動を変えることを覚えるのです。」と言っています。子どもたちはマシュマロを我慢する時に「このマシュマロはただの雲で、お菓子じゃない」と自分に言い聞かせたり、見ないようにしたりします。それは大人も一緒で、手の届かない棚に置いたり、このブログを書くまで食べるのはやめておこうと考えたり、自分に約束をします。

 

何かを想定することで、自分の行動を制御、修正する実行制御(実行機能)は進化戦略としても優れているとゴプニックは言います。子どもは世界の仕組みを知ることで別の世界を創造できるようになるというのはこれまでの内容でした。他人の心を理解することで他人の行動を想像し、変えることを覚えるということも紹介しました。これらの能力は自分の行動を想像し、自分を制御するためにも使えるのです。

 

マシュマロ実験で子どもたちが学んだのは重要な心の理論ですとゴプニックは言います。それは欲しいものに気持ちを集中すればするほど、余計に欲しくなる。逆に別のことを考えるようにすれば、欲しい気持ちを抑えられるということを学んだというのです。子どもは心の理論に基づき自分の心を制御する方法を学びます。そして、これは他人についての知識をもとに人を操ったり、様々な予測をもとに装置を作動させたりする反事実の使うのと同じメカニズムであるとゴプニックは言っています。

 

この「気をそらす」というのは保育においても、よく使われます。この時期、新入園児が入園してくると子どもたちは親と離れるのを嫌がり、泣いてしまう子どもたちがたくさんいます。その中で、先生は抱っこをしたり、まず落ち着かせます。落ち着いている子どもの様子を見ていると、どこかぼーっと周りの様子を観察しているように見えます。しかし、それは他のものに目を移して、眺めることで、保護者と分かれたことから気をそらし、考えないようにしているのでしょう。それを証拠に、思い出すとまた泣いてしまいます。子どもたちは自分たちが環境に適応していくために、こういった心の理論を使っているのです。そして、こういった心の理論をうまく使えないことで、子どもたちに悪い影響が出るということも分かります。この実行機能が使えないというのは環境にうまく適応できないことでもあるのです。子どもたちにおいて、無駄な発達がないというのは保育をしていて感じますが、そもそもある能力を失わせてしまう環境を作らないように保育を考えていかないければいけないということを改めて感じます。