ジェンダー格差

アンドレアス氏は協同問題解決能力において、すべての国がジェンダー格差を縮小していく必要があると言っています。というのも、2012年のPISAで個人の問題解決スキルを評価した際、ほとんどの国で男子は女子よりも高い得点を示しました。一方で2015年の協同問題解決能力では、読解力、科学的リテラシー、数学的リテラシーの影響を考慮しても考慮しなくても、各国の女子は男子よりも優れていました。協同問題解決能力におけるジェンダー格差は、読解力のそれよりもさらに大きいそうです。この結果は一体どういったことを示しているのでしょうか。

 

アンドレアス氏はこれらの結果は、「協同に対する生徒の態度に反映されている」と言っています。女子は関係に対してより積極的な態度を示し、他の人の意見により興味を持ち、他者の成功を望む傾向にあるというのです。一方で、男子はチームワークのメリットや共同がどのくらい効果的であり効率的であるかをみる傾向が強いことが言えるようです。これはもしかすると、人間の進化上の問題もあるのかもしれないと思います。女性は生存戦略においては家族を守ることが主としてあり、協同して家族を守ったり、部落でのつながりを保ったりしています。そこで協同な活動ができなければ部落から追い出されてしまう場合があります。一方で、男性は狩りに出なければいけません。人間はほかの生物とは違い、ひとりで戦うのではなく、複数人でのチームワークを通して獲物を狩ります。このように、私たちの遺伝子にはそもそものスキルというものが男女によって違って宿っているのかもしれません。そして、それが学習においてもちょっとした違いが出ている可能性があると私は感じています。

 

では、アンドレアス氏はこのことに対してどう考えているのでしょうか。アンドレアス氏は「協同に対する前向きな態度は、PISAの協同にかかわる能力の構成要素であり、態度が共同に影響を与える」といっています。そして、「たとえ人間関係による因果関係が不明確であっても、他者への感謝や豊かな友人関係を学校で育むことができれば、男子の方が女子よりも協同問題解決能力において良い成果を残すかもしれない」と話していています。アンドレアス氏は人間関係によって協同問題解決能力への男女差は変えることができると考えているようです。そのため、こういった「協同に対する態度」に関する原因は教室環境にあると言っています。

 

PISAでは、科学の授業で自分の意見を説明したり、実験室で実験に取り組んだり、科学的な問いを議論したり、探求のためのクラス討論をするなど、コミュニケーションを集中的に行う活動にどれくらいの頻度で参加するかを調査しました。その結果これらの活動と協同に対する積極的な態度には、明確な関係が見られました。平均して、これらの活動により頻繁に参加すると回答した生徒は、関係やチームワークを大切にしていると言っています。

 

人はこういった意味では環境によって、性質を柔軟に変える力を持っているのかもしれません。