高等専門学校と教科横断

アンドレアス氏は「イノベーションと問題解決には、異質なものを組み合わせ、つなぎ合わせ、今までにない想定外のものを想像することが重要である」と言っています。そして、そのためには「オープンマインド、今まで関係なかったアイデアの結合を含み、さまざまな分野に精通していることも必要なことだ」と言っています。それは一つの事柄について学んでいるだけではつく力ではありません。総合的な分野の知識も知っておき、なおかつ、関連付ける力も必要になってくるのです。そうすることで独創的なスキルが得られることになるというのです。では、そういった力をつけるにはどうしたらいいのでしょうか。PISAはそのために、生徒が学校の教科の枠組みを超えて考えることが必要だと考えていました。しかし、実際に教科横断的な課題を解決することの困難さが見えてきたのです。

 

そういった教育の実現はできないのでしょうか。アンドレアス氏は「それでもいくつかの国では、教科横断的な能力を育成しようとしている」と言っています。その例として、日本の国立高等専門学校機構(高専機構)を挙げています。2018年にアンドレアス氏は高等専門学校の東京キャンパスを視察したそうです。そこでは実践的で協働的なプロジェクト学習が多いため、一見するとキャンパスは専門学校のように見えたそうです。しかし、高専は別物だといいます。アンドレアス氏は「全国51の高専は実際には日本で最も精選された高校やカレッジの一つであり、そのカリキュラムは技術や科学と同じくらい一般教養も重視している。卒業生の約40%は、大学に進学して学び続ける。高専から直接就職する生徒は、日本で最も引く手あまたのイノベーターやエンジニアとして平均で一人当たり20件もの旧人を得ている」といいます。

 

では、その高専の特徴はどういったところにあるのでしょうか。それは「教室での学習と実践的なプロジェクト学習のユニークな一体」であると言います。そこでは学習は教科横断的かつ学生中心であり、教員は大荷コーチやメンターの役割を担っているのです。それは世界中の学校で流行しているような、人為的な1週間のプログラムでは無く、生徒のアイデアを発展させ、実現するために数年間を掛けてプロジェクトに取り組むような形になっているそうです。このような彼らの実践の成果はお蔵入りにならず、日本発のイノベーションの一つとしてインキュベーター(起業を支援するもの)の支援により商品化されることも珍しくないのです。このようなプロジェクト学習は最近になって注目されているが、高専では1960年代からすでに実施されているのです。

 

では、その他の学校ではどうだったかというと、1990年代後半には日本では総合的学習の時間によって、教科横断的な学習を導入しようとしたが、教育現場での実践には十分に組み込まれず、テストで教科ごとの知識を重視する中等教育では、その影響は限られました。

 

「関連付ける力」というのは今の時代重要視されているようです。しかし、「教科」として分かれてしまうと、なかなか総合的な教科としてはできにくいのかもしれません。保育においても「5領域」がありますが、見ているとどうも切り分けて考えられることも多いように思います。しかし、それらの力は総合的であり、密接に関わっています。